『伝えたいこと7』



ルフィの、その瞳を睨み返す。
「お前、何をした。」
一瞬怯えるような表情をしたが、またすぐニヤリと笑う。
「ふん。そんなに心配?
 そんならケンカなんかしないで、ちゃんと捕まえときゃよかったのに。」
確かにその通りだ。
不適な笑みと、図星を指されたことと。
頭には来るが、何も言えないでいた。

「サンジはね、俺の幼なじみなんだ。」
「サンジが?」
最早、自分の手中と思ったのか、ルフィは話し出した。
「ウソップのことは随分前から聞かされてたよ。ゾロの恋人、ウソップ。
 そのウソップに惚れてるってね。」
サンジがウソップに?!
確かに仲は良かったが、そんな素振りは全く見せていなかったのに。
「だけど俺はそんなこと、全然興味なかったけどね。
 これでも今どきの女の子ですから、面白そうだなとは思って聞いてただけ。
 そんな時、ゾロがうちへ来たんだよ。」
ルフィはクスクス笑いながら、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
「カッコイイって思った。
 この人だって思った。
 運命の出逢いっていうやつだよな。
 俺はゾロと一緒になるんだって決めたんだ。」
「随分と急で勝手な話だな。」
あら、とルフィは意外そうな顔をし、自信たっぷりに答えた。
「だから、運命なんだよ、ゾロ。」

ルフィは話し続ける。
「だから、サンジと協力しあうことに決めたんだ。俺がゾロ。サンジがウソップ。」
随分と都合のいい考えに基づく協定だなと、半ば呆れて聞いていた。
そこから先は、聞かなくても大体想像できた。
ルフィは俺の上司である父親に頼んで、俺との縁談を持ち掛けてもらう。
その事を俺がウソップに話さないのを見込んで、サンジがウソップに話す。
サンジはウソップの悩みを色々と聞いていたようだから、大なり小なり、
揉め事になるだろうと踏んだ訳だ。
俺達は、まんまと計画通りにケンカしたってことか。
なんとも情けない話だ。

だが…
「そんな話を俺にしたら、俺達が元通りになるとは思わないのか。」
普通、そう考えるだろう。
ルフィが俺の顔を覗き込んだ。
よくぞ聞いてたくれました、そんな表情。
その瞳は、悪意に満ちていた。
「それは、ないね。」
その声に、ゾクリ、とした。
ルフィがどれだけの執念で、ことを進めてきたのか、見えた気がした。

「どうしてだと思う?」

ルフィの表情、質問の意味。
グルグルと頭の中で、渦巻くものを感じた。
まさか、と思う。
ウソップに限ってそんなこと。

「ゾロは頭がいいから、もう分かってるだろ?」
ヤメロ、言うな、聞きたくない!!
…ウソップ…ウソップに会わなくちゃ…。

何もかもが。
ネガみたいに反転してしまったかのように。
俺はポンと暗闇に放り込まれた気がした。



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