『伝えたいこと6』
あの時のウソップの顔。
今更そんなこと言うのかよ、と言いたげだった。
今更。
だけど俺にしてみれば、お前だって今更だぞ。
付き合って何年経っても、遠慮がちな態度は変わる気配もなく、
いつになったら距離が縮まるんだろうって思っていた。
いつだって、楽しければいいよなと言い、俺を欲している様子も見せない。
俺が会いたいと言わなきゃ、連絡さえも寄越さない。
それが、俺をどれだけ悩ませたことか。
それでも、会った時に見せる笑顔だとか、止まらない程に喋り続けたりだとか、
キスをする度顔を赤くしたりだとか。
そんな様子を見ると、何だか嬉しくて。
俺は情けない位、ウソップに惚れていた。
「眉間にしわ寄せて、女の子と待ち合わせしてるって顔じゃねぇよなぁ。」
不意に声をかけられて顔を上げる。
黒髪でショートカット、大きな目の…少年?
「…誰?」
「ゾロの待ち合わせの相手だ。」
「はぁ?!」
縁談は断った。
専務も話の分かる人なので理解してくれた。
が。
「娘が一度だけでいいからデートして欲しいって言ってるんだが…。」
それでも、普段の俺なら断っただろうが、ウソップのこともあって何となく
やけくそで請け負ってしまった。
「俺が待ち合わせの相手だよ。」
ニコニコ笑う、どう見ても少年。
「ルフィって言うんだ。ちゃんと女だぞ。」
「そ、そうは見えんが。」
アハハハハと笑うルフィ。
「正直だな、ゾロは!」
笑顔は確かに、可愛らしいと思った。
「色々迷惑かけたみたいで、悪かったな。」
悪びれた様子もなくルフィは笑う。
「前にうちに来ただろ。あん時チラッと見て、カッコイイなって思ってさ。」
「そうか。」
「で、それとなく親父に聞いてみたら、なんか益々興味出てきて。
親父に言ったら『ルフィが異性に興味を持つなんて!!』って大喜びしちまって。」
今までどんな娘だったか、聞かなくても想像出来るな。
専務も苦労したんだろう。
「で、縁談騒ぎになったという訳なんだ。」
「なるほど。」
それに振り回されて…ウソップとあんなことに…。
ハァ…溜め息がでる。
「でも俺は本気だから。」
「はぁ?!」
「ゾロが好きだ。」
真っ直ぐ俺を見つめる瞳は、紛れもなく本気な瞳だ。
「気持ちは嬉しいんだが…」
こんなことにはなったが、今まで以上にウソップを好きだと自覚する自分に気づいてるから。
「嫌だ。」
「嫌って…」
「ゾロは俺と一緒になるんだ。」
「お前何言ってんだ?」
さっきまで、笑顔が可愛らしいと思っていたルフィ。
その表情が一変した。
「アイツか?」
「え?」
「ウソップが、そんなに好きか?」
「!!」
ウソップ?!なんで?!
「アイツならきっと…」
何故ウソップを知ってるんだ?!
「今はサンジと付き合ってるんだから!」
頭の中が真っ白だった。
ウソップが?
サンジ?!
ルフィ…お前、何をしたんだ?!