『伝えたいこと5』


ぼんやりと天井を見つめる。
目が覚めたら、サンジはいなくて。
ただ、肌に残る感覚とタバコの匂いが、彼がこの部屋にいたことを物語っていて。

サンジは優しかった。
キスも抱擁もセックスも。
ゾロの強引さとは、全く違ってて…俺を想ってくれてるのが肌から伝わってくる、
そんな感じで。
ああ、こういうのもあるんだなと、なんだか他人事のように思った。
こんな時でも、ゾロが出てくる自分に、いい加減呆れてしまうけど。

サンジが俺を好きだったなんて…。
俺はずっとゾロのこと相談したりしてたのに。
サンジは「俺は面倒見がいいから」と笑って聞いてくれてたのに。
それなのに。
俺はサンジの気持ちに全く気づかなかった。
いや、もしかして、気づこうとしてなかったかもしれない。

「…いつから?」
と尋ねたら、
「さあな、気がついたら…かな。まあ、好きになるのって、そういうもんだろ。」
と、切なそうに笑ったサンジ。
何か言わなきゃ。
そう思えば思うほど、頭ん中はぐちゃぐちゃになって…。
結局ごめんとしか言えなかった。
今までのこと。
サンジの想いに応えられないこと。

哀しい微笑み。
サンジは何も言わずに抱き締めてくれた。
なんとも言えない、包み込むような暖かさ。
申し訳ない思いでいっぱいなのに、この暖かさは、
今の俺には染み入るほどにありがたくて。
ホントにホントに、何で俺が好きなのはサンジじゃなくて、
ゾロなんだろうと思う位に嬉しくて。
そうして、ほとんど寝てなかった俺はようやく眠りについたのだった。

 

たった2日間で色んなことがありすぎて、俺の大したことない脳みそでは
フリーズ寸前だった。
それでも、ほんの少しの睡眠は俺を正気に戻した。
何も変わってないはずの部屋なのに、違って見えるのは
色々ありすぎたせいだろうか。
ゆるゆるとベッドから起き上がると、テーブルの上に食事が用意してあることに
気が付いた。
「サンジ…」
紙が置いてあった。
「手紙…か?」
テーブルに近づき、紙を手に取った。

『食欲なくてもちゃんと食え。少しは元気が出るはずだ。
 それから昨日のことは忘れてくれ。俺達はこれからもずっと友人だ。』

「ああ、俺は、俺は…」
麻痺していたはずの感情が戻ってくる。
ぶわっと涙が溢れた。
俺はなんて馬鹿なんだ。
サンジの気持ちに応えられないことは、最初が分かってたのに。
サンジはどんな想いで俺を抱いたんだ…!!
拒むことも、優しさだったというのに…。
俺はなんて残酷なことをしてしまったんだろう。
自分のことばかり考えて、なんてズルイんだろう…!
残されていた手紙と、優しさと、タバコの匂いを抱き締めて。
「サンジ…サンジィ…ごめんっ…」

 

俺は…最低だ。

 

 

 

 

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