『伝えたいこと2』


携帯が鳴る。
まさか、ゾロ?!
番号を確認する。
あ…サンジだ。
なんとなく、ガッカリした自分を振り払って電話にでた。

「…もしもし」
『ウソップ!お前ゾロに何言った!?』
「は?」
『アイツ、俺とさっきのまで残業してたんだけど、お前だろ?
 何か喧嘩してる風だったのは。』
「あ、ああ…」
残業中だったんだ…。
悪いことしたかな…いや、もう関係ねぇし。
『携帯切った後、ものすごい睨まれてな、後で覚悟しとけよ、
 とかアイツ言うから。』
「ええええ?!サンジは関係ないだろうが!?」
ゾロのヤツ、何やってんだよ。
『んでな、直ぐ様どこかに電話してさ、
 お断りした例の件、了承していただけないなら、退職させていただきます、って…』
「はあぁぁ??!」
なんだよ、なんだよそれ。
『まさかとは思うんだけど、例の件って、縁談のことか?!』
「知るか!俺に聞くな!」
『ともかく、その後、ものすごい勢いで出てったから…そっち行ったかも。』

そっちって…こっち?!
ええええええ?!
ま、まずい。
今はゾロに会いたくない。
とにかく、こっから避難しとかないと。
「サンジ、連絡くれてありがとう。」
『なんの。なぁウソップ、あんま無理すんな。楽に行こうぜ。』
「それが出来てりゃ苦労してねぇよ。」
『はっ、どうもそのようだな。』
「いつも心配ばっかかけて、すまない。感謝してるよ。」
『気にすんな。お節介な性分なんだよ。』

サンジに礼を言って携帯を切る。
直ぐに身支度を整えて、部屋を出た。
どこへ行こう。
とりあえず、なるべく離れないと。

アパートを離れて駅と反対方向に向かう。
ゾロはいつも電車でうちへ来るから。
速足で歩きながら、サンジからの電話を思い出していた。
縁談断わって退職する?!
正気の沙汰とは思えねぇ。
ゾロ、お前何考えてんだよ…訳分かんねぇ。
俺は…ゾロにとってそんな特になる人間じゃねぇし。
だから、だから…頼むから、もうほっといて欲しい。
お前のこと、忘れられなくなるその前に。
…いや、どうなんだろう。
もうすでに俺はアイツのこと忘れられなくなってんじゃねぇのか。
こんなにも切ないのは、きっと…。
そんな想いを振り払うように、歩みを速める。

しばらく歩くと向こうから人が歩いてくるのに気が付いた。
夜だから、顔は見えないだろうけど、さっきまで泣いていたことを
思い出して顔を背ける。
ちらりと見えたシルエット…馴染みのある…。
ま…まさか、何で、どうして…。
立ち止まり、ゆっくりと顔を向けた。

「ゾロ…」
「バーカ。お前の考えることなんかお見通しなんだよ。
 サンジのやりそうなこともな。」
地を這うような、低い声。
ひ…怒ってる…。
「えらく早かったな…」
「タクシー。そこの通りまで。」
そうか…その手があったか…。
「とにかく、お前んち行くぞ。」
「やっ…やめっ…離せって!!」
暴れる俺をモノともせず、ゾロは俺の腕を掴み、ズルズルと引きずるように歩き始めた。
俺のアパートに向かって。

 

 

 

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