『伝えたいこと1』


 

ゾロ…。

こんなにも、こんなにも、好きになってるとは思ってなかった。
その時その時が楽しければいい、いつもそう言ってた。
だから、楽な関係でいようって。

 


ゾロは高校の時の先輩で、あまりのカッコ良さに男女問わず告白する者が
耐えないと聞いた。
だから、ちょっと興味があった、それだけだった。
剣道場で初めて見たゾロは、噂で聞いていた印象と違い、凛としたその姿に
一目で恋に落ちた。

初めは何かの冗談だと思った。
「ウソップ、俺と付き合ってみねぇか?」
「へ?」
なんで俺?
なんで、どうして?
だから、ゾロが高校卒業しても、大学卒業しても、就職しても俺と別れないのが
不思議でしょうがなかったんだ。
理由は、きっと楽だったから。
元々自分に自信のない俺は、ゾロを束縛するようなことはしなかったし、出来なかった。
ゾロが好きな時に俺に会いに来て、俺を抱いて、俺の他愛もない話を聞いて。
それだけで良かったんだ。
俺はそれでも十分に幸せだったから。


「ゾロに縁談が持ち上がってんだよ。」
サンジから聞かされた。
サンジはゾロの同僚で、たまに一緒に呑みに行ったり、飯作って貰ったり。
俺とゾロのことは、俺達を見てなんとなく気が付き、今は俺の唯一と相談相手だ。
「専務の娘がゾロを気に入ったらしくてさ、専務もゾロみたいに出来る奴ならって
 乗り気なんだよ。」
「…ふーん。」
サンジが驚いた顔をした。
「ふーんって…いいのかよ?」
「良いも悪いも、俺がとやかく言えることじゃねぇし。」
俺が嫌だって言ったらしないのか?
そんな訳ねぇよな。
専務の娘なら出世間違い無しなんじゃねぇの?
そんな話を蹴るヤツはいねぇだろ、普通。

「ふーん。」
「なんだよ、サンジ。」
「なーんも。」


サンジに縁談の話を聞いてから、ゾロがその話をしてくれるのを待っていた。
もう会わねぇって言われるのを待っていた。
昔から思い描いてた、別れの瞬間。
その時が近づいている、そう思っていた。
が、
待てど暮らせど、そんな素振りは一切見せない。
いつも通り、そのまんまのゾロ。
優しく抱きしめるのも、キスをするのも。
その変わらなさ加減が、余計に辛かった。
だから、だから。

『はぁ?何言ってんだ、ウソップ!?』
「だから、もううちに来んなよ。」
『訳分かんねぇ、なんだよ唐突に!?』
「会えないよ!会いたくねぇよ!!」
『…何を聞いた…』
「うまくやれよ。じゃあ…。」
『ま、待て!話は終わっちゃいね…』

携帯を切る、その手が震える。
涙が溢れる。
こんなに、こんなに、好きだった。
「ちっくしょう…分かってたはずなのに…。」
こんな日がくると、いつか、会えなくなる日がくると、分かってたはずなのに。
溢れる涙を止めることが出来ない。
…今日だけ、今だけ…
自分を抱きしめるように、膝を抱えて泣いた。
声を押し殺して。
ゾロ、ゾロ…。
声にならない声で呼び続けた。

 

 

 

 

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ゾロウソパラレル第2弾!
長くなる予定じゃなかったのになぜか長くなってしまった・・・・短いのって難しい。
目指したのは、一応昼ドラ(笑)