『好きなんて言えない』

 



「…ここ、どこだ。」

「お、ゾロ。目ぇ覚めたか〜おはよう。」

俺を見るゾロの目が、まさしく『点』ってやつで。
俺はおかしくなって吹き出した。
「なんつ〜顔してんだ、ゾロ。まさか昨日のこと、全然覚えねぇとか?」
笑いながらそう言った。
色々思うことはあった。
でも、俺は普通でいようって決めていた。
「ゾロすげぇ酔っ払って、俺がおぶってここまで連れて来てやったんだからなぁ!」
いやーもう大変だったぜ、と少しばかり大袈裟に言ってやった。
大変だったのは本当だけど。

ゾロはしばらくぼんやりと俺の顔を見ていたが、何かを思い出したらしく、
みるみる真っ赤になっていった。
ゾロが思い出したのは、多分、告白のこと。
そのことに触れていいのか、ずっと考えてた。
実は、一睡も出来なかった。
俺はゾロが好きだって気が付いたけど、その理由なんて全然分かんねぇし、
何しろほら、男同士…だし。
別にそおいうの、否定的な訳じゃねぇけど、いざ自分ってなると…正直ちょっと腰が引けてしまう。

そんなことを考えてたら無言になっちまって、オマケにゾロもなんも言わねぇから、
気が付いたら長い沈黙になってしまっていた。
そうなると、ますます沈黙が続いてしまう。
気まずい以外の何物でもない。
うわぁ、どうしよう。
そもそも、ゾロとそんなに話したことがある訳じゃねぇし、変に話題を変えるのも不自然だし。
そんな風に、なんだかぐるぐる考えて、普通にするはずが、全く普通じゃねぇ感じになってしまった。


「あの…ウソップ。」
「あ、うぇ??な、なに??」
ゾロの方から口を開いた。
「俺…昨日なんか…言ってなかったか?」
「なんか?!」
もしかして…あの告白の部分の記憶が曖昧?
そういや、すぐ寝ちまったもんな…。
そうか、そうなんだ…。


「いや、別になんも。」
「そ、そうか。」
ホッとしたような顔。
ゾロは、俺に告白するつもりなんてなかったんだな。
その気持ちは痛いほどによく分かった。
やっぱり、そんな簡単じゃねぇよな、普通に考えて。
だから、だから。
俺がゾロの気持ちを知ってることは、内緒にしとこう。
うん、それがいいんだ。
ちょっとだけ、胸の奥が痛んだけど。


「高くつくっつったろ?晩飯位奢れよな!」
笑いながらそう言うと、ゾロが嬉しそうに
「ああ、そうだな。」
と笑った。


別にいいんだ。
恋人とか、そんな関係じゃなくても。
こうして話をしたり、笑い合えたりするだけで、ほんわかとした気分になるから。
きっとゾロもそう思っているに違いない。
こんな想いは、伝えない方がいいんだ。
例え、お互いに想っていたとしても、結果的には辛い思いをするだろうから。
だから、だから。


胸が痛んだ。
切ないと思った。
ただそれよりも、ゾロの笑顔が嬉しくて。


「世話になったな。晩飯は、今夜でいいのか?」
「ああ。七時に駅前で待ち合わせようぜ。」
「……迎えに来るよ。」
「ふぇ?!…あ…うん。じゃあ…待ってる。」


じゃあな、と帰っていくゾロを見送って、ドアを閉めた。


ゾロと晩飯。
嬉しい。
なんにしようかな。
あれこれ考えて、ドキドキする。
これからいい友達付き合いが出来たらいいな。
ゾロも、そう思ってたらいいけどな。


ふと、
手に落ちてきた滴に気が付いて驚く。
頬を伝う、滴。

 

あれ、なんで俺泣いてんだろう?


 



『告白〜好きだ〜』の続きです。
やっぱり書いちゃいましたw
ゾロウソの切ない系大好きなもんだから、やっぱ切なくしちゃったよ。
切なくすると長くなるんだけどなぁ〜・・・まあ、いいかww

 

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