『Start Line』

 

 『ウソップ〜!釣りしようぜ、釣り!!』

 

『おお、ルフィ、いいタイミングだ!今丁度ウソップ様特製の必ずつれ〜るが完成したところだ!』

 

『おおお!おんもしろそ〜!おい、チョッパーも来いよ〜!』

 

『なんだ、なんだ?必ず釣れるのか?すごいなぁ〜ウソップは!!』

 

『よ〜し、今夜のディナーは魚づくしと行くか。お前ら、当てにしてるからな!』

 

『おおう!まかせとけ〜!!』

 

 

 

うるっせぇ…。

ったく、あいつら、ここでオレが寝てる(振りをしている)ことに気付きもしねぇで。

ま、いつものことだけどな。

いつもの当たりめぇのことなのに、今日はなんでこんなにイライラするんだ。

 

夕べ、ルフィがうなされていた。

半端じゃねぇうなされ方で、しかも号泣してて。

それがオレの夢だったと言う。

オレがいなくなる夢。

 

正直言って、本気で嬉しかった。もう少しで、ルフィに手を伸ばして抱きしめるところだった。

んなこと、出来る訳ないけどな。

 

「ルフィ、オレは何処までも、お前と一緒だ。」

 

ああああああ、なんてセリフだ。オレがあんなこと言うなんて、ラブコックじゃあるめぇし。

ルフィが寝てしまってたことに賭けるしかねぇなぁ。

 

今朝のルフィはいつもと変わらなかった。

むしろご機嫌の部類じゃなかったか。

 

『医者の言うことは聞くもんだぞ。』

 

なんだよ、それ。

あんだけすがるような目でオレを見つめていたのに、今度は逆にオレの心配か?訳分かんねぇ。

あの時オレをみつめていた瞳は、今ウソップの作った釣りざおをみつめてる。なんなんだよ、ったく…。

 

まぁ、いいじゃねぇか、ルフィが元気なら。

そう、ルフィが笑顔なら問題ねぇ。

…って思ってるはずなのにー!

ルフィが気になってしかたがねぇ。

あいつの笑顔が他のヤツラに向けられると…なんとも言えねぇ気分になる。

オイオイ、一体どうしちまったんだ、オレは。

 

「お〜〜い、サンジ!見てくれよ!すんげ〜魚釣れたぞ〜!」

クソコックに向かって…ルフィの満面の笑み。

「お、そいつは天ぷらが旨そうだな」

「おおお、うまほー!サンジの作る飯は最高だからなー!!」

確かに飯は旨い。

 

「しっかし、すんごいなぁ〜ウソップは!ホントに必ず釣れるんだもんな〜!!」

「当たり前よ〜このウソップ様にかかれば当然の結果ヨォ」

確かにすげぇ。

 

でも、聞いてはいられない。

どうにかなりそうだ。

 

オレはいらだちを隠すようにして、その場を離れようとした。

 

「ゾロ!起きたのか?!見てみろよ〜すげ〜ぞぉ!」

「…うるせぇんだよ、お前らは。ゆっくり昼寝もできゃしねぇ」

 

ルフィがキョトンとした顔をする。

こんなこと言いたい訳じゃないのに、悪態をつくことしか出来なかった。

 

「そか、悪かったな、ゾロ。」

ルフィの笑顔が、痛かった…。

 

いたたまれない気分になっていたオレに、ウソップが何か言いたげな視線を送ってきた。

「なんだよ、ウソップ。なんか文句あんのか。」

「…大人げねぇ」

「ああ?!」

「おお!今私の『なんかやべ〜ぞセンサー』が強く反応したぞ!」

ウソップは猛ダッシュで逃げていった。

なんだってんだよ。

 

「ご機嫌斜めだな、クソ剣士」

「あ?!お前にそんなこと言われる筋合いはねぇよ、グルグルまゆげ」

「はっ、素直じゃないと言うか、分かりやすいと言うか。」

「ぁあ?!」

サンジが何か含みのある笑い方をした。

こいつにしても、ウソップにしても、なんなんだよ、一体。

 

「お前、好きなんだろう?」

「はぁ?!」

なななな、なに?

誰が誰をだ??

「お前、ルフィが好きだろう?」

 

ドクン…

 

胸の奥で何かが…

 

ドクン、ドクン…

 

なんだ、何が起きてる…?

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…

 

なんだか分からねぇけど、訳の分からねぇ気持ちでいっぱいで、すげぇ胸が痛くて…

気が付いたら、

 

「お〜見事な赤と緑のコントラストだ」

 

「!!」

何言ってやがるっ!

そう言うつもりだった。

言葉が出なかった。

胸がいっぱいで、切なくて、何がなんだか分かんねぇ、これって…

 

「オレは…好き…なのか?ル、ルフィのことが…」

 

「はぁ?!なんだお前気付いてなかったのか?」

コックがあからさまに驚き、

「ハッキリ言って、仲間になった時から気付いてたぜ、オレは。」

半ば呆れた顔をして、

ホントに鈍いな、お前、と付け加えることも忘れない。

 

そうか、そうなんだ。

オレはルフィが…

そうならばオレの妙な感情も、つじつまが合う。

 

「頭ん中整理出来たか、マリモ」

「誰がマリモだ」

「お前以外に誰がいる」

 

ちっくしょう、弱味を握られたみたいで調子が出ねぇ。

 

「ま、オレは手を抜く気はないんでね」

「は?」

「お前みたいな恋愛初心者にオレ様が負ける訳はねぇけどな」

 

何ィィィ?!

 

「お前、まさか…」

 

「オレ様だって負けないね。なんたって超一流の狙撃手だからな」

 

「う、ウソップ?!」

 

 

 

向こうから歓声が聞こえる。

何か釣れたらしいルフィとチョッパーの声だ。

楽し気な二人をヨソに、オレ達の熱いバトルの幕は切って落とされた。

 

 

 

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「Hand Power」続きです。
ルフィ総受け?
そんなつもりはなかったんだけどww
何気に続いちゃいます。