a promise 7 − 発信 − 』(ウソップ)



「ウソップ、お前何してるんだ?」

ルフィの声に我に帰った。

目の前にルフィがいる。

よく思い出せないが、家まで帰って来て、玄関の前で立ち尽くしていたようだ。

「ああ、ルフィ…ただいま。」

「あ?んーおかえり。」

ルフィが首を傾げている。

「今日は図書館の日じゃなかったのか?」

ドキンッ

胸が痛くなる…

「今日は…ちょっと…」

「ん…そか」

ルフィはそれ以上何も聞かなかった。

こういう時のルフィは、俺から話さない限り聞いてはこない。

気が付いてるんだろうと思う、何かあったんだなと。

それでも詮索するようなことはしない。

ルフィの優しさを感じる。

いつもはそんなルフィに甘えて、何でも話してしまう俺だが、

今回は話すことが出来そうになかった。

どう話したらいいのか、全く分からなかった。

俺のゾロへの想い。

ゾロの行動の真意。

 

 

 

そんなモヤモヤした気持ちのまま、床についた。

俺とルフィは同じ部屋で、ベッドは二段ベッド。

上がルフィで下が俺。

一緒に住むことになった時、ルフィの提案でそうなった。

ルフィと兄弟になったみたいで、嬉しかったっけな。

安堵感も手伝って、よく眠れるようになったんだが、

今夜は眠れそうになかった。

ルフィが寝ている上段の床を見つめながら、

もう寝ただろうか…そんなことを考えていた。

そして、何度したか分からない寝返りを打った時、

「ウソップ、起きてるんだろう?」

ルフィの声が聞こえた。

「ああ…起きてるけど…」

ルフィが寝返りを打つ音が聞こえた。

 

「あんな、俺は…何があってもウソップの味方だから。」

 

体が震えた。

熱いものがこみあげてくる。

ルフィなら、分かってくれるのかもしれない。

 

 

それから俺は、ポツリポツリと話始めた。

ゾロのことは好きだが、それを恋愛感情と認めてしまうのが怖いこと。

周囲に受け入れてはもらえない想いだということ。

ゾロに迷惑を掛けたくない気持ちが強いこと。

ゾロの真意が分からないこと。

その行動の意味も。

 

 

ルフィは黙っている。

やはりルフィにも分かってはもらえないか…。

 

「すまん、ルフィ。変なこと言って…忘れて…」

「知ってたよ。」

「え?」

 

ゴソゴソと音がして、ベッドからルフィが降りてきた。

慌てて俺も起き上がった。

 

「そのゾロってやつが好きなんだって知ってたよ。」

ルフィがシシシと笑う。

「ウソップのことで分からねぇことはないからな!」
「ルフィ…」

「俺はさ、ウソップのしたいようにすればいいって思う。」

ルフィは笑顔のまま話始める。

「難しいことはよくわかんねぇ。

でもウソップ、そいつの話をする時はいつも『コイ』する目だった。

俺、嬉しかったんだ。

ウソップいつも自分を抑えたりするから、自分の感情を押し殺したりするから。

ウソップが『好きな人』のこと話すなんて初めてだったし。

だからそいつもウソップを好きだといいなって思ってた。」

 

ルフィの意外な告白にただ驚いた。

そんな風に思ってたなんて。

ルフィの手が俺の頭をクシャクシャっと撫でた。

「ウソップ、考え過ぎ。もっと素直になればいいんだよ。」

そして、ニカッと笑った。

 

 

ルフィの笑顔を見ていたら、悩んでいた自分が小さくなっていくのが分かった。

「ありがとな、ルフィ。」

 

急に、ゾロの声が聞きたくなった。

よく考えてみたら、突然帰っちまうなんて悪いことしたよな…。

 

「ん?ルフィ、どこ行くんだ?」

部屋を出ようとするルフィ。

「俺、エースの部屋で寝るからさ。」

「ええ?!なんでだよ??」

「まだ起きてんじゃねぇか?ゾロってやつ。」

「!」

12時か…確かにそうかもしれねぇが…

「携帯、してみろよ。」

「え?!今から??」

ルフィがまたニカッと笑った。

「おやすみ!ウソップ!」

「お、おい…」

 

バタンッ

 

ルフィって…意外とお節介なのかな…

っつーか、俺ってそんな分かりやすいのか?

 

 

部屋に一人残された俺は、鞄から携帯を取り出し、ゾロの番号を眺めた。

発信を押せば、ゾロにつながる。

そう思うと、ドキドキしてなかなか押すことが出来ない。

 

「っつーか、乙女かよ、俺は!」

自分にはっぱを掛けて、発信を押す。

押した瞬間、心臓がドクンと鳴った。

ルフィ、俺、どうなんのかな…?

 

呼び出し音を聞きながら、そんなことを考えていた。

 

 

 

 

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