a promise 2 − 視線 − 』(ゾロ)

 

 

気が付いたのはいつだったか…その視線に。

毎週図書館へ行くと必ずその視線を感じた。

 

図書館へは毎週水曜日に来ている。

図書館の近くに住む中学生の家庭教師をしてるからだ。

それまでの時間を図書館で過ごしてる。

勉強するのは嫌いじゃねぇ。

ただ、ここまで本気で勉強するようになったのには理由がある。

 

物心ついた時から竹刀を握ってきた。

好きなのかもよく分からねぇままに、がむしゃらにやってきた。

気が付けば、周りは俺のことを『天才』だのなんだの言うようになっていた。

高一でインターハイに優勝すれば、それも当然かもしれない。

俺の目標はその更に上にあったがな。

その想いを貫けなくなる時は、案外あっさりやってきた。

高二になってすぐ、事故に遭い、利き足を骨折してしまった。

骨はくっついたが、力が入り難くなり、選手としては絶望と医者に言われた。

それからの俺はかなり腐ってたと思う。

只でさえ近寄り難い存在だったと思うが、更に拍車がかかり、気が付けば俺に話しかけてくるのは

、クラスメイトのサンジとナミだけだった。

「ちょっと!あんた只でさえ顔恐いんだから、眉間にしわ寄せんの止めなさいよ!夢に出そうだわ!」

「全く、ナミさんの言う通りだぞ。お前まともにメシ食ってないだろう。

 ほら、弁当作ったから、ちゃんと食えよ!」

サンジもナミも、身内のいない俺を気遣ってくれたが、俺は塞ぎ込んだままだった。

 

ある日、体育教師のフランキーが声を掛けてきた。

「そのーなんだ、俺のかみさんに会ってみねぇか」

「はぁ?」

なんで俺がと思ったが、半ば強引に会うことになった。

「この人が…嫁さん?」

「おう!ロビンってーいうんだ!」

「…どうやって騙したんだ?」

「フフフ、騙されてなんかないわよ。私が口説いたんだから。」

穏やかに笑う…えれぇ美人。

医者だと言うロビンは俺に『スポーツ医学』を学ぶことを勧めた。

「あなた…もったいないわ。あれだけの腕を持っていたんだもの。

それに随分頭も良いみたいだし…あなたの経験は、必ず活かせるはずよ。」

 

それからの俺は、正直生き返ったようだったと思う。

もしかしたら剣道の変わりに、打ち込める何かを求めていたのかもしれない。

生きる糧を得た、正にそんな感じだった。

だが大学へ行くにも金がいる、そんなことで、可能な限りバイトも始めた。

 

図書館でアイツに出会ったのは、そんな時だった。

いや、出会ったと言うより、気付いたと言うべきか。

正直、自惚れる訳じゃねぇが、見られることには慣れている。

またか…と思ったが、その視線が同じ歳くれぇの男子生徒からだと気付いた時は、かなり驚いた。

あれで気付かれてないつもりなのか、と思うくらい、しっかりとした眼差しで俺を見つめていた。

全く、なんのつもりだよ…。

 

気にしていないつもりだった。

だがある日、アイツが来なかった時、何故かガッカリしてしまっている自分がいた。

誰だって用の一つもあるだろうとか、もう飽きたのかもしれねぇとか、具合でも悪くしたのかとか、

まさか事故じゃ?とか、とにかくぐるぐる考えてしまい、翌週アイツの姿を見た時はかなり安堵してしまっていた。

 

アイツがいることが当たり前で、いないことが不自然で。

声を掛けようにも、そうすることが適当じゃねぇ気がして。

そんなこんなで、もう半年になるか…名前くらいは知りたいんだがな。

 

 

 

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