a promise 1 − 確認 − 』(ウソップ)


 

俺には毎週水曜日の放課後、必ず行く所がある。

市立図書館…の一番奥にある窓側の席。

そこに座るひときわ鮮やかな緑色の髪をしたアイツに会うために。

 

 

「会う」と言っても面識がある訳じゃねぇ。

アイツが水曜日のこの時間帯だけ、ここにいることを知ってから、

よほどのことがない限り、俺もここに通っている。

初めてアイツをここで見た時、正直すげぇ綺麗だと思った。

男なのに、俺も男なのに、胸が締め付けられるほどドキドキした。

あんまり綺麗でしばらくほうけて立ち尽くしたくらいだ。

綺麗な緑色の髪。

短けぇが、触れば柔らかそうな、そんな髪。

通った鼻筋。

涼やかで切長の目。

その目で見つめられたら、女なんてイチコロなんだろうな。

俺はと言えば

髪は天パで真っ黒。

鼻なんてやたら長げぇし、目はどんぐりみてぇに小さく真ん丸。

この差はなんなんだってやつだよな。

 

そんな訳で、勉強の気分転換に来ていたはずの図書館なのに、

何故かアイツが来ているか確認するために通うようになってしまった。

通ううちに、アイツは水曜日の放課後だけ来ていることが分かったし、

5時45分になると帰って行くことも分かった。

そんな風にして、俺はもう半年近くもアイツを見つめ続けてきた。

 

 

「ウソップ、今日は図書館に行く日か?」

「ああ、そうだけど…なんだ、ルフィ。何か用があるんだろ?」

ルフィには何でも話しているから、図書館のアイツのことも知っている。

そのルフィが何か言い難そうに俺の顔を覗き込む。

ルフィがこんな顔をする時は、困ったことがある時だ。

 

ルフィ。

俺の幼なじみ。

子供の頃に母親を亡くし、つい最近、仕事でずっと離れて暮らしていた

父親をも亡くした俺を、いつも支えてくれる親友。

今はルフィの家に下宿させてもらっている。

ルフィの家はとても賑やかで、親を亡くしてしまった俺にとっては気分も紛れたし、

ルフィの両親、シャンクスさんとマキノさんも俺のことをかわいがってくれてるし、

エース兄さんも優しい。

ルフィの家族には感謝してもしきれない。

 

「実はさ、マキノ今日誕生日なんだ。」

「え?!マキノさん誕生日なのか?!」

「シャンクス仕事忙しくてプレゼント買えないから俺に買っておいてくれって。」

ルフィにプレゼント買っとけって…シャンクスさん、考え無しだなぁ。

「俺、そおいうこと全然ダメだろ?だからウソップについて来て欲しいんだよ。」

よりによって今日なのかよ、と心の中でツッコミを入れたが、断われる訳がない。

早く済ませれば、何とか間に合うかもしれないし。

「わーったわーった、付き合うよ、買い物に。」

「サンキューウソップ!恩に切るよ!」

嬉しそうなルフィの顔を見ると、俺まで嬉しくなる。

 

俺たちは、マキノさんが好みそうな雑貨店で買い物をし、花屋で花束を買った。

「マキノきっと喜ぶよ!」
お前も嬉しそうだぞ。

 

時計に目をやる。

五時半か…自転車飛ばせば間に合うかな。

「ルフィ、先に帰っててくれるか?」

「行くのか?図書館。」

「ああ、飛ばせば間に合うかも。」

一瞬間を置いて、ルフィが言った。

「なんで、声掛けねぇんだ?」

ドキン。

胸が強く反応する。

そんなの、そんなの、掛けれる訳ねぇだろうよ。

掛けてどうするんだ?

「いいんだよ、そんなんじゃねぇから。」

足早に図書館へ向かう。

ルフィは時に確信を突く。そうだな、俺、何やってんだろう。

 

図書館に着くと、いつもの場所に向かう。

アイツの姿はなかった。

今日は来ていたんだろうか、ここに座っていたんだろうか。

アイツがいつも座っている席に手を触れる。

何だか情けない想いでいっぱいになって、苦笑いした。

 

別に

アイツに俺を知って欲しいだとか、話をしてみてぇだとか、思ってる訳じゃねぇ。

そう、確認することがクセなってる、そんなところだ。

そう、ただそれだけだ。

 

そんな風に、声を掛けることも出来ないアイツ。

間に合わないことが分かっていても、確認しに来ずにはいられないアイツ。

アイツ…。

何て、名前なんだろうな。

 

 

NOVEL TOP     NEXT→

 



初めて長編にチャレンジ・・・っつうか、なってしまった小説です。
無駄に長いので、結構覚悟して読んでくださいw
これ、実はドリカムのとある歌からイメージしました。
「短い髪、しゃんとした後姿思い出すたび、あなたのようになれたらと憧れる」
って歌詞があって。
短い髪、しゃんとした後姿・・・・ゾロじゃんw(短絡的)
で、この憧れてる子は眼鏡をかけてて、自分があまり好きじゃないって感じの子だったので
ルフィじゃなくてウソップになったという訳です。
そんなことで、こんな長い話になるとは全く持って思っても見なかったけど
小説を書く楽しみをしった・・・そんな作品なので思い入れも強いです。
ああそうそう、ゾロウソにはまるきっかけにもなりましたしねw