『 a promise 15 − 自制 − 』(ゾロ)
光を感じてまどろみから目覚める。
普段は感じない温もりと重みを左腕に受ける。
ウソップ。
俺の、大切な大切な人。
◇ ◇ ◇
雪の降るクリスマスの夜。
どうしても、どうしてもウソップに会いたかった。
降り積もる雪を、一番に教えたかった。
だから、約束を破ることになると分かってはいたが、
気が付いたらウソップの家の前にいた。
ウソップがそこにいる。
そう思うと居ても立ってもいられなかった。
顔を見てしまったら尚更だ。
抱き締めて、声を聞いて。
離れたくなかった。
泣き出しそうなウソップを茶化してみたりしたけど、俺だって同じ思いだった。
うちに来たウソップは、かなり緊張しているようで、
この間のことを気にしているのかと思った。
「なんもしねぇよ。一緒に居てぇだけだから。」
だけど、ウソップは戸惑いの表情を見せる。
なんだ?俺変なこと言ってるか?
「あ、あのさ。」
「ん?どうした?」
モジモジと言いにくそうだ。
だんだん頬が赤くなっていく。
「この間、怖かったんだけどさ…今はもう怖くねぇんだ…その、むしろ…」
ボン!
って音がしたんじゃねぇかと思うほど、一気に真っ赤になった。
「無理すんなよ、俺は大丈夫だから。」
「ち、違うんだ。」
ウソップが首を勢いよく左右に振る。
「お、俺…後悔してたんだ、あの日怖いと感じたことを。」
「え?」
「もう、怖いなんて、言わねぇから…」
ウソップが、俺の目を見る。
憂いをふくんで、そそられる。
「そんなこと…俺本気にしちまうぞ。」
「俺だって本気だ。」
俺の胸に額をコツンとくっつける。
「…ずっと、ゾロが欲しかったんだ。」
ドクンッ。
強く心臓が反応する。
俺だってずっとウソップを欲していた。
触れたら壊れてしまうんじゃないかと思うほど、繊細なウソップ。
ああ、でも。
そんな風に言われ自制出来るほど、俺は出来た人間じゃねぇ。
荒々しくウソップを抱き締めると、飢えを癒すように唇を合わせる。
「んん…あっ」
時折漏れるウソップの吐息に俺はもう止めることが出来ない。
そのまま抱きかかえてベッドに押し倒す。
ベッドの上で、小さく震えるウソップ。
「怖い…か?」
「…全然怖くねぇって言ったら嘘になるよ。」
ウソップが微笑んで俺の頬に手を触れる。
「でも…なんでかな。ずっとこうしたいと思ってたから。」
愛しくて、切なくて。
色んな想いが俺の中を駆け巡る。
だけど今は、ウソップが欲しくてしょうがない。
「ああ、その目…」
ウソップはそう呟くとゆっくり目を閉じた。
指で頬をなぞり、首筋をなぞり、一瞬ウソップの唇が開く。
もちろんそれを見逃さない。
その唇を塞ぐと、舌を絡ませ、ウソップの唾液を吸う。
それからの俺は、まるで何かに取り憑かれたように、夢中でウソップに酔いしれた。
真っ赤な全身を隈無く眺め、キスを浴びせ、ウソップの声に更にそそられる。
「ん…ああっ…ゾロォ…!!」
シーツをギュッと掴み、のけぞるウソップを強く抱き締める。
「ウソップ…力、抜いててくれな。」
「あ…う、うん…。」
ウソップが数回、深呼吸する。
俺の顔を見て、
「うん、大丈夫。」
怖いくせに、笑顔を見せるウソップ。
愛しくてしょうがない。
欲しくてしょうがない。
ゆっくり、ウソップに押し入る。
「はぁ!ううっ…ああぁ!」
苦痛に顔が歪む。
呼吸が荒く、全身に力が入っている。
「大丈夫か?止めるか?」
「う…ちょっと、待って…」
必死で呼吸を整える。
そして、涙ぐみながら微笑む。
「いいよ、ゾロ。」
俺は頷いてウソップの頬にキスをし、ウソップの奥まで、己を突き立てる。
「んんっ、はぁぁっ!」
身体がこわばる。
さっきよりも辛そうな表情。
だけど、俺の方は、ウソップとひとつになった感動と、締め付けられる感触に、
こっちの意識が飛びそうだった。
ハァハァと苦しそうなウソップの呼吸が落ち着くのを待って、ゆっくりと動き始める。
「あっ…はぁん…!」
クッと唇を噛み、耐えているウソップの表情。
こんなにも感じる表情は、ない、と思う。
自制が効かない。
徐々に速く動き出す自分を止められない。
その時。
ウソップの表情が、変わった。
なんて顔するんだ。
うっとりとした目、頬はピンクに染まり、口は半開き。
その口から漏れる声は、さっきより少し高くなっていて、甘ったるい感じに聞こえる。
止まらない。
止められる訳がない。
動きがどんどん速くなっていく俺に、ウソップはしがみつき、甘い声を上げる。
もうどうにかなりそうな快楽の中で、俺は初めて会話を交わした日の事を思い出していた。
あの日から、俺は変わった。
生まれ変わったと言っていい。
お前が居なかったら、俺はなんの感動もなく、生きていただろう。
お前には感謝してもしきれない。
ウソップ。
…愛してるよ…。
甘い声が、更に高くなる。
「あっ!ああんっ!!」
しがみついていた身体を反らし、高みへ登りつめる。
俺も限界だ。
「クッ…行くぞ、ウソップ。」
「ああああっ!ゾロォ!!」
◇ ◇ ◇
ウソップが目を開けた。
「あ…ゾロ…おはよ…」
「おう、おはよ。」
今更、また真っ赤になってるウソップが可愛らしくて、クックと笑う。
「なぁ、ゾロ。」
「あ?なんだ?」
「もちょっとだけ、こうしてていいか?」
「腕枕か?」
「う、うん。」
「いいぜ、もっかいさしてくれるなら。」
驚いて、飛び起きるウソップ。
「ハハハハ、冗談だよ。」
「だからっ!ゾロのは冗談に聞こえねぇんだよ!」
あんなの何回もしたらおかしくなっちまう、と口の中でブツブツと呟きながら、
また俺の腕の中に収まった。
お前、誘ってんのかよ。
つーか、自覚ねぇな、全く。
やれやれ、先が思いやられる。
ちょっとは思い知らさせてやるか。
俺は、自制と言う厄介なものをしまい込み、再びキスの雨をウソップに降らした。
「くぉらっ!!ゾロ、おめぇちょっとは我慢しろよ!!」
「じゃあ抵抗しろよ。」