a promise 11 − 勇気 − 』(ゾロ)



あれから、俺とウソップは付き合うようになった。

付き合うと言っても、パッと見には仲の良い友達と言った感じだろう。

違うのは同性なのに『好き』と言う気持ちがお互いにあるということか。

時々図書館の本棚の陰で、抱き締めたり軽くキスをしたりする。

その度に、ウソップの顔、いや、全身と言っていい、真っ赤になる。

そして、恥ずかしそうに笑う。

ヘヘへっと笑う。

そんなウソップが可愛いと思うし、とてもいとおしい。

大切にしたいと思う。

思う、が。

あの真っ赤になる身体を全身眺めてみたいだとか、

肌と肌を合わせてみたいだとか、

その肌に唇を這わせてみたいだとか…

そんな欲望も沸々と込み上げてくる。

俺がおかしいのかもしれない。

相手はウソップだ。

男相手に、俺は欲情している。

そんな馬鹿なと思ったりもしたが、そもそもウソップを好きだと思った時点で

想定すべきことだったんだろうな。

 

ふう、とため息をつく。

 

「どうかしたのか?」

ウソップが俺の顔を覗き込む。

うっ…。

「な、なんでもねぇよ。」

参考書に視線を移して何事もなかったように振る舞う。

や、やばかった!

ここが図書館でなければ確実に『スイッチ』が入っているところだ(汗)

今度はウソップに気付かれないように、小さくため息をつく。

ウソップと図書館で一緒にいられる時間は短い。

なのに俺はいつもこんな感じで過ごしてしまう。

この時間を、もっと楽しみたいのに…。

 

ふと、ウソップを見ると、いつもより何だか落ち着かない感じがした。

ソワソワしている。

いつも俺の顔を眺めて、嬉しそうなウソップが…何か言いたそうな、

でもどうしようか、そんな感じだ。

そんなことを思っていたら、ウソップが意を決したようにキッと俺の顔を見た。

 

「な、なんだ?」

「なあ、またゾロん家遊びに行ってもいいか?」

「へ?」

「ほら、この間のコーヒー、美味かったし。」

「ああ、コーヒーな。」

そんなに美味かったのか?

「勉強の邪魔はしねぇよ。ただ…」

「ただ…?」

「…もちょっとだけ、一緒にいる時間が欲しいだけだ。」

 

今は、俺が受験を控えてる身だから、ウソップは気を遣って図書館以外で会おうとは言わない。

そのウソップが、全身真っ赤にして俺と一緒にいたいと言う。

これでスイッチが入らない方がおかしいだろう。

俺は席を立つとウソップの手を取り、慌てるウソップを本棚の陰に連れて行く。

何が何だか分からないといった表情のウソップを、強く抱き締めた。

「どした、ゾロ?」

心配そうに、俺の顔を見ようとするウソップ。

見せられない。

きっと今俺は嬉しくて泣きそうな、情けない顔をしてる。

こんな顔、好きなヤツには見せられない。

 

その時ウソップが、驚くほど強い力で俺の身体をグイッと押した。

驚いている俺の顔を、しばらくジッと見ていた。

 

「ゾロ、ごめんな。」

「え?」

なんのことだ?

「俺、分かってるんだ、ゾロが…その…俺のこと…そおいう目で見てるって…」

分かってる?

気付かれてる?!

俺の邪な気持ちを?!

クラクラとした。

恥ずかしくて、カァと身体が熱くなる。

「いや、それはその…」

「俺、ゾロなら…いいと思ってるんだよ。」

え?まさか、そんな…。

「でも…でもな、やっぱ少し怖いんだよ。そおいうこと、したことねぇし…」

「あ、ああ。」

そりゃそうだよな。

「だから…今はこれで許してくれよ。」

これでって…?

 

ウソップが両手でそっと俺の頬に触れる。

震えている。

何をする気だ…?

 

ウソップの顔が近づいて、フワッと触れるキスをした。

甘い、切ない想いで、胸がいっぱいになる。

初めて、ウソップからキスをしてくれた。

いつもは、俺からしていた。

ウソップはそれだけで、真っ赤になるほどなのに。

衝撃が、俺を襲う。

一体どれだけの勇気がいっただろう。

俺の為に、こんなに震えてまで。

「ウソップ…」

「…俺、ゾロがスゲェ好きだから。」

そう言うと、ギュッと抱き締めてくれた。

ウソップの気持ちが嬉しかった。

ふがいない自分に情けなくもなる。

 

「だから…コーヒー。」

「ぶっ…なんだよ、それ。」

「うっせぇよ、照れ隠しだ。」

隠せてねぇぞ、と今度は俺からキスをした。

真っ赤になるウソップの耳元で囁く。

「うちに来たら、こんなんじゃ済ませねぇけど、どうする?」

青くなって、フルフルと首を振って、赤くなるウソップ。

笑いを堪えて「冗談だ、コーヒー、いいぜ。」と言うと、

「ゾロのは冗談に聞こえねぇんだよ…」と唇を尖らす。

 

大丈夫だ、ちゃんと待つよ。

ウソップが、それでいいと思うまで。

だが、その時が来たら…覚悟しとけよ?

 

 

 

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