『始まりは彼女から』(FrankySide)

 

俺が麦わらの船に乗りたいと思ったのは、船長である男、モンキー・D・ルフィの存在があったからこそだ。

己の仲間の為に、世界を敵に回すこともいとわない。

だからこそ、他のクルー達は何の躊躇もなく船長に従う。

いや、従うと言うより、同調すると言ったところか。

 

 

もう一つ、俺が仲間になることを決めた理由がある。

己の命はもちろん、世界中が犠牲になっても構わない、守るべきは仲間達の命…向かう方向はどうあれ、

ニコ・ロビンは芯の強い女だ。

そしてそれ故の脆さを持っている。

そんなアイツの側に居てやりたいと思うようになったのは、一体いつからだったんだろう。

 

 

ウォーターセブンを出航して、俺様とバカバーグ達で造り上げたこの『サウザンド・サニー号』のすばらしさに奴らが

感動し始めた頃。

ニコ・ロビンが妙なことを言い出した。

 

「今夜、私が眠れなかったら、夜明かしに付き合ってくれないかしら?」

「はぁ?何言ってんだ、オメェはよ?」

「じゃあ、お願いしたからね。」

「ちょっと待て!今の会話は成立してねぇだろうが!?」

振り向き、にこやかに微笑む。

…何も言えなかった。

 

その夜。

よく考えてみたら、野郎共がみんないる男部屋から、俺だけを呼び出すことなんて出来ねぇよな。

はは、からかわれてんな、俺は。

新参者だからか?

ホッとしたような、少し残念なような。

こっちが眠れねぇや。

と、ぼやいた時、

何かが首に触れた。

なんだ?

目を凝らして見ると…

「!!」

手、だ。

「な、な?」

手が、ドアを指差す。

ドアを見ると、そこにも手があり、手招きをしている。

「ニコ・ロビンか…」

なるほど、オメェらしい呼び出し方だな。

ふむ、行くしかねぇよな、この場合。

部屋を出ると、手がフワフワと手招きしている。

どうやらリビングに向かっているようだ。

リビングに入ると、ソファに座り、微笑むニコ・ロビンがいた。

 

「来てくれて、嬉しいわ。」

「来なかったらまた痛い目に遭いそうだからな。」

「あら、なんのことかしら?」

クスクスと笑う。

そして、

「どうぞ」

と、自分の隣へ座るよう促す。

一瞬悩んだが、断ることが出来ねぇと諦め、隣に座った。

 

「で、俺様に何か用でもあるのかよ?」

「用?」

しばらく考えて、

「ないわ。」

「はぁ?!じゃ何しに俺様を呼び出してんだ??」

「貴方が良かったから、じゃ駄目なのかしら?」

ぐっ…言葉に詰まる。

「ああ、そうね、お礼が言いたかった、でどうかしら?」

「礼だと?」

心当たりがねぇ。

サニー号のことか?

「『存在することは罪にならない。』そう言ったわよね。」

「ああ?」

確かに。

エニエス・ロビーに向かうパッフィング・トムの中で俺は言った。

己こそが諸悪の根源、そんな顔をしていたニコ・ロビン。

そいつは違う、と教えてやりたかった。

トムさんが俺に教えてくれたように。

「笑わないで聞いてくれるかしら?あの時私、貴方に口説かれているような気がしたのよ。」

「な、何だと?!」

クスクスと恥ずかしそうに笑う。

「だって、あの時私達初対面だったわよね?なのに貴方は私が今まで背負っていたことを全部否定して、

私自身を肯定したのよ?」

「そ、そんなつもりは…」

「まあ、聞いて。今まで私が賞金首の『ニコ・ロビン』だと知って、まともに話そうなんて人はいなかったわ、

ルフィ達を除いて。」

8歳の時から世界政府に追われ続けてきた人生は、俺のとは比にならねぇ。

それは分かるんだが…。

「嬉しかったのよ。あんな風に言ってくれる人がいるなんて思ってなかったから。」

「あれは…俺の師匠の受け売りだ。」

「そう…トムさんって言ってた人のことね?素敵な師匠さんだったのね。」

「ああ…。」

 

なんだか色んなとこが、くすぐったいような、色んな感覚がこうごちゃまぜになったような感じで、

何を話したらいいのかさっぱり分からねぇ。

 

「そういえば、私達って似てると思わない?」

「ああ?」

どこが?どんな風に?

「とてもとても大切なものを世界政府に奪われて、長いこと辛い想いをしてきたわよね。」

「…そうだな。」

「でも、ルフィに救われた。」

「…麦わらに…」

そうだな、俺達は似ているのかもしれねぇ。

だから、側に居てやりてぇと思ったのかもしれねぇな。

 

そんなことを思っていたら、ニコ・ロビンが俺の頬に手を触れた。

「おわっ!な、何しやがる!?」

咲かせていない、ちゃんと自分の手。

「だから、お礼よ。」

そう言うと、俺の頬にキスをした。

何が何だか分からずに、呆然としている俺に向かって、

「ありがとう。貴方と話したらなんだか眠れそうな気がしてきたわ。」

「…そうか。」

また、咲き誇る花のように、微笑む。

「またしましょうね、夜中のデート。」

デ、デートだぁ?!

急にかぁっと熱くなってくる。

「オメェ何言ってんだ?」

「フフフ、おやすみなさい。」

「お、おい…待てって…」

 

リビングに取り残された俺は、混乱した頭の中を整理する。

ようするに、ようするに…どういうことだ?

さっぱり分からん!

あの女、何考えてやがる。

分かっていることは、また呼び出しを喰うということだけだ。

 

キスされた頬を擦りながら、味わった事のない感情に戸惑う。

でもまあ、悪くはねぇよな。

 

 

 


 

フランキーって恋愛慣れしてなさそうなとこがツボw
兄貴ーー!頑張れ!!


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