『始まりは彼女から』(RobinSide)
「存在することは罪にはならねぇ。」
あの人はそう言った。
生きていることが罪だと言い聞かせ、死を受け入れていた私に
「そいつは間違ってる」
と、真正面から否定されたような気がした。
カティ・フラム。
またの名を『フランキー』。
彼もまた、世界政府によって人生を狂わされた人間の一人。
ルフィに加勢することで、狂わされた時を巻き戻そうとしていた。
もちろん、失われたものは戻らないけれど、過去の自分と決別する、エニエス・ロビーでのフランキーの戦いは、
そんな意味があったのだと思う。
彼と共に戦ったあの橋の上で、
「私はもう、一人じゃない。」
そんな充足感があった。
思うように戦えない私を守りながら戦ったフランキー。
そんな彼に惹かれるようになっても、不思議じゃないわよね。
だから…
「大体はオメェなんちゅう呼び出し方をするんだ!」
「あら、随分早かったわね。」
見張り部屋に飛び込んできたのはフランキー。
呼び出しをしたのはついさっきだから…随分と早いわね。
サイボーグだからかしら?
「あのなぁ…」
額に手を当てて、大きく息を吐いた。
「何かしら?」
「普通寝てる人間にだ、しかも首に、クラッチかけて無事に生きているやつはそうはいねぇぞ!?」
早口で彼はまくしたてた。
「貴方生きているじゃない?」
「俺はサイボーグだ!!」
何を怒っているのかよく分からないけど…
謝った方がいいのかしら?
「私が悪かったわ、ごめんなさい。」
意外だったのか、少し驚いた顔をした。
「い、いや…わかりゃいいんだよ…」
「次は腕にしとくわ。」
「だからオメェは技から離れろって!!」
また怒らせてしまったわ。
なかなか難しいものね、男性って。
大体どんな風に呼び出すのが普通なのかが分からない。
今までしたこともない。
困ったわね。
「全く、何考えて俺を呼び出すのか知らねぇが、横着な呼び出し方すんなよな。」
「横着?私が?」
それは心外だわ。
「これって結構大変なのよ。」
辺り一面に私の手の花が咲く。
見えない場所に咲かすのは、もっと大変。
「だから!そういう意味じゃねぇよ!強制的に呼び出すなっつってんだよ!」
意味が分からない。
一番分かりやすくて、無駄がないように思ったのに。
首を傾げた。
フランキーも少し考え込むような表情をした。
私は…私は貴方と話がしたい、それだけなのに。
不意に、フランキーの大きな手が私の手を握った。
驚いている私にフランキーは少し間を置いて言った。
「オメェの技はスゲェと思う。なんつうか、綺麗だしな。
でも俺は…咲かせていねぇ、オメェのこの手で呼び出して欲しいんだ。」
「フランキー…」
「俺に来て欲しいと思う見張り番の日は、俺の腕に手を触れろ。一度でいい。そうしたら俺は必ず…ここに来る。」
ドキドキする。
嬉しくてたまらない。
私の想いが受け入れられた、そんな感じがした。
「分かったわ、貴方の腕に触れればいいのね。」
するとフランキーはいたずらっぽく笑い、
「他のヤツにみつからないようにな。それもドキドキの材料だ。」
「スリルってことね。」
ニヤリ、とフランキーは笑った。
それから、私達は何をする訳でもなく、海を眺めて、たまに一言二言話して過ごした。
夜明けが近くなり、そろそろサンジくんが朝食の支度に起きてくる頃。
「そろそろ、戻らねぇとな。」
「そうね。」
フランキーが部屋を出ようとして、立ち止まった。
「どうかした?」
振り向く、フランキー。
「見張り番の日じゃねぇ時に、その…俺に会いたくなったら、今までみたいに呼び出せよ。」
意外な言葉に声が出ない。
あんなに怒っていたのに。
「ただし!腕にな!」
ニヤリと笑う彼に、こちらもおかしくて笑ってしまった。
「ええ、そうさせてもらうわ。腕にね。」
彼が部屋を出た後も、くすぐったい感覚が残る。
あの二十年の間には、味わうことが出来なかった。
でも、今は…。
満たされた想いで、夜明けの海を眺める。
「ロビンちゃ〜ん!モーニングコーヒーいかがですか〜!」
「ありがとう、いただくわ。」
少し多目に貰おう。
後で彼にも分けてあげたい。
ああ、それよりもコーラの方がいいのかしら。
そんな風に考えることは、きっとフランキーも同じだろうと思うと、自然に笑みがこぼれる。
一緒にいたい。
側にいて欲しい。
きっと今夜も彼にクラッチをかけることになる。
もちろん、腕にだけど。
きっとロビンも恋愛慣れはしてないと思うんですよね。
だからきっとすぐにバレるんだよ、クルー達にw
ロビンも頑張れ!!