『好きなんて言えない4』

 



ゾロと一緒にいたかった。
ずっと。
だから、何も話さなくても、黙っていても、一緒にいられる時間が嬉しかった。
ゾロに散歩に誘われて、ブラブラと歩くだけ。
それだけなのに。


繁華街を抜けると、少し静かな感じになる。
公園を見付けると、ゾロが表情で促した。
ベンチに座る。
黙ってるのも何だから、喋り出す。
「今日はありがとな。ご馳走さまでした。」
「あ?いや、こっちこそ色々と悪かったな。」


ゾロの、
俺を見るその目が…
なんか優しくて、なんかドキドキして。
正直身体が硬直して、喉もカラカラだ。


「な、なんか、喉渇いたな。さっき自販機見かけたから、なんか飲みもん買ってくるよ!」
立ち上がりかけた俺の右腕をゾロが掴んだ。


ドキンッ…。


「今日は…俺の驕りなんだろ?」
ゾロはそう言うと、ニッと笑って手を離した。
「待ってろよ、今買ってくるから。」


ゾロの後ろ姿を見ながら、俺はゾロに掴まれた腕に熱を感じていた。
ドキドキドキドキ。
どんどん速くなっていく鼓動。
もしかして、顔とか赤くなってるかも。
どうして、どうして。
こんなにも切ない、こんなにも愛しく思う。
だけど…


「男同士だっつーの…」


自分で言ったその言葉に、
俺はすごく傷付いていた。
こんなことおかしいよ。
好きだけどダメなんて、絶対変だ。
でも、やっぱりダメなんだよ。
胸が痛い。
切なくてどうにかなりそうだ。


「ウソップ…どうした?」
気が付くと、ゾロが目の前に立っていた。
「え…どうしたって?」
「…いや、その…涙。」
えっ…
頬を伝う涙に、その時ようやく気が付いた。
やばいっ…俺…


「ああ…ちょっと目にゴミがな…」
真実味のないことを言いながら涙を拭った。
「そうか…」
信じてないだろうけど、何も聞かずにゾロはジュースを差し出した。
「…ありがとう。」


そのまま。
しばらく俺達は何も話さなかった。
何を言っていいのか、もう全然分からなかったから。


「ウソップ。」
「あ…何?」


ようやく声を出したゾロが、少し話しにくそうに、
でも、意を決したように話し始めた。


「昨日…悪かったな、変なこと言って。」
「…え?」
「あと、聞かなかったふりしてくれたの、嬉しかった。」
「ゾロ…もしかして…」
ふわり、とゾロが微笑んだ。
「ちゃんと、覚えてるよ。覚えてて良かった。好きなヤツに告白したんだからな。」
す、好きなヤツって…
途端に心臓が騒ぎ出す。
騒ぐってより、暴れる?
とにかくドキドキドキドキで、言葉が全然出て来ない。


「ウソップが聞かなかったふりをしてくれたから、俺も普通に出来た。」
ゾロは話し続ける。
「最後の思い出、出来た。」
最後?
どういうことだ?
「ウソップ、俺を振ってくれないか?」
「振る?」
「…変だよな、こんなの。分かってるんだ。普通じゃねぇって。気持ち悪りぃって。」


ゾロだって悩んでいたんだ。
考えてみたら当然で、なのにそんな風に全然思っていなかった。
「ゾロ…俺…」
「気持ち悪りぃから止めてくれって言って欲しいんだ。」
ゾロは…
俺への想いを消したいんだ。
全部、忘れたいんだ…。


俺は立ち上がって、歩き始めた。
少し離れたところで立ち止まると、ゾロに背中を向けたまま言った。
「せっかく…聞かなかったことにしてやったのに…台無しだな。止めろよな、気持ち悪いから…」

ゾロの方を向くことは出来なかった。
涙が溢れそうだったから。
好きなのに、好きなのに。
好きと伝えることが出来ない。
ゾロが俺を好きだと言ってくれたのに、
その気持ちを消そうとしてることが、悲しくてしょうがないのに。


「ありがとう…」
不意に背後で声がして、
後ろから抱き締められた。
「ありがとう…」
もう一度、耳元で声がして、
ギュッと強く抱き締められて。
「…ごめんな。」


ゾロの気配が消えても、
俺はその場から動けなかった。
どうして…どうして。
俺は自分の気持ちを伝えなかったんだろう。
俺も好きだと言えなかったんだろう。
こんなに悲しいのに、こんなに切ないのに。
溢れる涙を拭い、ゾロが買ってくれたジュースを一気に飲んだ。




その日俺は、何度もかかって着ていたナミからの携帯に、
出ることが出来なかった。





 



ゾロ、ウソップがぐるぐるしてます。
そしてここにも・・・・ええ、私もぐるぐるです(爆)
どうも私はウソップを泣かせたいらしい。
切なくて、我慢して、しすぎて後悔して。
そんなウソップがツボw


 

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