a promise 17 − 温度 − 』(ゾロ)



「ゾロ、俺これからコンビニのバイトだから。」

「あ?ああ、そうか。」

「帰り遅いし、寝てていいから。じゃ、行ってきます。」

「おう、気をつけてな。」

夕食を食べた後、ウソップはバイトに出かけて行った。

 

この春、ウソップは高校を卒業して、俺と住むようになった。

待ちに待った、という感じだった。

始めの頃は、ウソップも俺に甘えて可愛いもんだったけど…

この頃は、バイトも何件かしてるし、好きだった小物作りを仕事にする為に、

暇さえあれば何やら作っては売ったりしている。

俺は俺で、大学やバイトや勉強で、あんまり構ってもやれなくて。

 

「ふう…」

 

もちろん、今でもウソップのことは誰よりも大事な存在だ。

だけど、どう接していいのか分からなくて…何だか自分にイライラする。

生活になんの支えもない俺達が、一緒に住もうなんてことが、

そもそも甘かったんだよな…。

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

バイト先からの帰り道。

馴染みのある声に足が止まる。

小さな雑貨店の前に店を出させて貰っているウソップだった。

回りには女の子がたくさんいて、あーだのこーだの、ウソップに話しかけていた。

「そっかーじゃあ彼とうまくいったんだね、良かったなぁ!」

「ウソップさんのおかげですよ〜ありがとうございます!」

「俺はなんもしてねぇよ、君に似合うアクセ選んだだけだし。」

嬉しそうに笑うウソップ。

何だか心がチクンと痛んだ。

あんな笑顔、俺はしばらく見ていない気がする。

そう思うとまたイライラしてきた。

何でそんな女なんかに、そんな笑顔を見せるんだよ。

ウソップに見つからないよう、その場から離れた。

いたたまれない気分だった。

 

  ◇  ◇  ◇

 

「ただいま〜!」

「…おかえり。」

「…何?なんかゾロ不機嫌??」

その通りだよ。

でも言えるか、客の女に嫉妬しました、なんて。

「別に、何でもない。」

「…嘘。ゾロ分かりやす過ぎ。」

そう言って、俺の眉間に人差し指をトンと付けた。

「皺、何本あるかな〜?」

楽しそうに笑うウソップに、更にイライラする。

お前がご機嫌なのは、あの女のおかげだろう。

「うるせぇよ、ほっとけ。」

俺はウソップに背を向け、勉強を続けた。

背中に、近付いて来る気配。

「ゾロォ。」

振り向くもんか。

「ゾ〜ロ。」

振り向くもんか。

「なぁ、ゾロってば。」

「なんだよっ!!」

振り向いた俺に…

ウソップはキスをした。

あまりに突然で、唇から体に電気が走ったような感じがした。

そして、体がカァっと熱くなる。

不意をつかれてしばらく呆然とする。

「ゾロ、誕生日おめでとう!」

「え?」

そうだ、すっかり忘れてた。

自分の誕生日を祝う習慣が身についてないから、気が付かなかった。

ウソップは鞄の中から何かを取り出した。

「はい、プレゼント!」

綺麗にラッピングされた小箱。

開けてみると、

「これ…ピアス、か?」

「へへ、に見えるけど、イヤリングなんだ。」

ウソップが嬉しそうに笑う。

「この間、街でピアスしてるヤツ見て、かっこいいな、ああいうのって言ってただろ?

 でも病院とかじゃなかなか出来ねぇと思ってな。色々考えて作ってみたんだ。

 な、付けてみてくれよ。」

「あ、ああ。」

金色のイヤリングを付けてみる。

三つ。

三連ピアスみたいだ。

揺れる度に小気味いい金属の音がする。

「…やっぱよく似合う!ゾロには金色だと思ったんだ!」

喜ぶウソップに俺も嬉しくなる。

 

「ウソップ、ありがとう。」

今度は俺からキスをする。

今でもウソップは俺からキスすると真っ赤な顔をする。

その顔を見ると、俺はどうにもたまらなくなる。

そのまま押し倒すと、触れるキスから吸い付くようなキスに変わる。

「ん…あ…ゾロォ…」

舌を絡ませ、お互いを吸い尽くすかのような濃厚なキス。

体の芯がどんどん熱くなっていく。

ウソップのシャツのボタンに手をかけた。

「あ…飯、食いに行こうかと思ってたんだけど…」

そう言うウソップの目は、潤んでいて、その先を期待するものだった。

「やだ、ウソップを食っちまいたい。」

「ゾロは言うことがエロいんだよっ」

「んじゃ止めようか。」

「…ゾロの意地悪。」

拗ねる顔にまたそそられる。

俺はウソップに振り回されっぱなしだ。

ウソップ次第で、俺の生活はぐるりと変わる。

ああ、俺、ウソップに惚れてんなぁ。

 

「ゾロ。」

「あん?」

「愛してるぞ。」

「ああ、知ってる。」

クスクスとウソップは笑った。

自信たっぷりだなって。

違う。

自信なんてない。

些細なことで嫉妬してしまうくらいだ。

だけど、こうして肌を合わせていると、ウソップの体が俺を好きだと訴えてくれるから。

だから。

俺の側にいてくれ。

こうしてお前の温度を感じさせてくれ。

 

「ウソップ。」

「ん?」

「愛してるぞ。」

「ふふっ、知ってる。」

 

触れる温度が高くなる。

俺達の気持ちと同じように。

高く、高く。

ずっと、高く。


 

ゾロウソ 結局ゾロウソップの手のひらの上w

 

 ←BACK     NOVEL TOP

 

 

 

 



本当は「約束」で終わるはずだったんですが、二年後の彼らはどうしてるかなって、
不意に思いまして。

お友達にプレゼントした本の書き下ろしで書いたものです。

まあ・・・結局ラブラブかよって突っ込みは無しの方向で(笑)

これでホントにホントに終わりです。

思い付きから書き始めてこんなに続くとは全然思ってませんでした。

こんなとこまで付き合ってくださった方々に感謝です。