『もう逃れられない』


 

「はぁ、はぁ、やばいなぁ囲まれたか?」

久し振りのオフにちょっと街を歩きたくて、出掛けたのが間違いだった。
目ざとく見つけたファンの女の子に、あっという間に囲まれてしまった。
あれだけマネージャーに注意されてたのに…。
とにかくなんとか撒かないと。

少し入り込んだ路地裏に身を潜める。
だけど、ドンドン近付いてくる声。

「あれ絶対ゾロだよ。」
「うん、あんなグリーンの髪はそうないもんね。」

…今度からカツラにするよ。


「オイ、お前、追われてんだろ?」
背後から声がした。
振り向くと、華奢な感じのする少年が立っていた。
「あ…ああ。」
少年はニッと笑うと、
「ここ、隠れられるぜ。」
と、貸店舗の看板のあるテナントを指差した。
「え、でも…」
「心配すんな、うちの物件だ。」
そう言うと、鍵を開けて中に入れてくれた。
「奥の部屋に行けば外からは見えねぇよ。」
「あ、ありがとう。」
勧められるままに、奥の部屋に入った。

奥の部屋に入ると、表の道をファンの子が通り過ぎて行くのが分かった。
間一髪。
助かった。
あんなたくさんのファンに囲まれたら対応仕切れない。

「ありがとう、ホント助かったよ。」
「いや、なんてことねぇよ。」


よく見ると。
華奢と思っていたが、しっかりとした体つきをしている。
鍛えてあるんだろうな、そんな感じだ。
左目の下にある傷がなんとも印象的な少年だ。
それにしても、『うちの物件』だなんて、少なくとも俺よりは年下だと思うんだが…
いいとこの坊っちゃんには見えねぇし。
いや、人は見掛けによらねぇからな。

「お前、ロロノア・ゾロだろ?」
「え?あ、ああ。」
「テレビで見るより、なんて言うか…男前だな。」
「はは、そうか?そいつは嬉しいね。」
世辞でも嬉しいもんだ。
男に言われることなんてないからな。


「なぁ。」
「ああ?」
「…触っても、いいか?」
「はぁ?」
触る?
何をだ?
気が付いたら、少年は俺の目の前に立ち、肩の辺りにソッと触れた。
その瞬間の表情。
何か満足そうに『ニヤリ』と笑った。
ゾクッ…。
背筋に冷たいものを感じた。
本能が叫ぶ。
ヤバい、こいつはヤバい。
だけど、声が出ない。
何故だろう。
身体も固まってしまったかのように動かない。
感じるのは、『嫌悪』と『恐怖』…。

「オフだろ、今日は。」
なん…で?
「それぐらい、直ぐに分かるさ。売れっ子の俳優が、こんなとこに一人でいるなんて。
 少なくとも、仕事ではないなって。」
話している間、ずっと俺に触れたまま。
触れるというか…擦っている…その手つきが、なまめかしい感じで、更に嫌悪感が強まる。

「や…やめ…」
やっとのことで声が出る。
だけどヤツは嬉しそうに笑う。
「いいなって思ってたんだ、初めてテレビで見た時から。でもまあ、芸能人だし。
 会うこともないだろうし。でも、今日出会っちまった。こんなチャンス、二度と来ない。」
後退りする俺の背中が、壁にたどり着いた。
ズイッとヤツの顔が近づく。
「だから、逃さない。」
そう言うや否や。

ヤツは俺の口に喰らい付いていた。

何故。
どうして。
誰か…。




 



初めてちゃんとしたルゾロっぽいのを書いたんですよ。
何故俳優ゾロになったのかはよく分からないんですけど(汗)
でね、続きがどうしても書けなくて・・・そう、私『エロ』って書けないんですよね〜(今更)
それで、仲良くさせていただいております『ねづみ小屋』のねづみさんへのリクエスト権を使わせて貰って
続きを書いていただきました!!!
うっしゃあ!!!でかした!!!私!!!!(笑)
快諾していただいてありがとうございます、ねづみさん!!!!
と言うわけで、ねづみさんの続きを読んでくださいね♪


『続・もう逃れられない』  (ねづみさん作) →NEXT



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