『今だけだから』


別に俺は、男に全く興味がなかった訳じゃない。
興味の沸く男が、側にいなかっただけだ。
そう、アイツ以上に。

ゾロは、アイツになんとなく似ていたんだ。
容姿とかじゃなくて、持っている雰囲気とか、瞳の輝きとか。
だから興味を持った。
親父やサンジを通して調べみると、アイツと違って、かなりの強引さが売りの男だった。
だけど、時折見せる気配りなんかはどことなく似ていると思った。

だから。

ゾロしかいないって思った。
アイツ以上に愛せるヤツなんて、そうそう出逢えない。
絶対に、ゾロと一緒になるんだって思った。
なのに。

ゾロにはウソップがいて、あんなにしてまで別れさせようとしたのに、無駄な努力だった。
サンジに諭され、嫌だったけど、ゾロに謝りに行った。

「お前、いい女だよ。ホント、惜しいくらいだ。」

ゾロ、お前馬鹿だな。
あんな酷いことしたのに、『いい女』な訳あるかよ。
そんな優しさならいらないんだよ。
なんでそんなとこまで、アイツに似てるんだよ。
アイツ…エースに。

兄ちゃんを好きになるなんて、どうかしてると思った。
だけど気付いたんだ。
兄ちゃんを好きになったんじゃなくて、好きになった人が兄ちゃんだったんだ。
エースは俺の気持ちを知っても変わらず優しかった。
「ルフィは俺の宝物だ。」
なんて、平気で口にした。
それなのに、他の女と結婚してしまった。
俺を置いて、行ってしまった。
最後に、エースは俺にキスをしてくれた。
優しくて、切なくて。
こんなキスはいらないと思った。
こんな切ない恋は二度としたくないと思った。
だから、ゾロに出逢った時、きっと今度こそは幸せな恋にするんだと思った、のに。


ゾロの馬鹿。
余計に…忘れられないだろが!!

なんで、俺が想う相手は、愛しちゃいけないヤツばっかなんだろう。
なあ、サンジ。
聞いてるか?サンジ。
こんな話、サンジにしか出来ないんだよ。
なあ、サンジ。
もう少しだけ、俺のわがまま聞いてくれよ。
今だけ、胸貸してくれ。
今だけだから。
少し、泣かしてくれ。

 



 

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「伝えたいこと」のルフィバージョンでっす。
彼女にも、あんなことした理由がちゃんとあります。
悲しい恋を、もうしたくないから・・・強く強く思っていたから、だからこそ。
でも、恋愛感情は抜きにして、話を聞いてくれるサンジくんの存在は大きいよね♪
いい女だぞ!ルフィ!!
もっともっと、いい女になれ!!!