『誓い〜御身の仰せのままに〜』

 

 船長の誕生日。

宴好きの船長のために、クルー達は華々しく誕生会を開催した。

 

・・・とは言っても。

いつもの通り、いつものように、各々が宴を楽しんでいるだけ・・・の感もあった。

サンジの作る料理はいつもとびっきりで、皆の食べっぷりに嬉しそうだ。

ゾロとナミの飲み比べは、決着がつきそうもない。

ウソップの一人のど自慢は55番あたりから怪しくなってきている。

そのウソップの伴奏を見事にこなしているブルックはさすが音楽家といったところ。

聴いているのはチョッパーだけなのはご愛嬌。

フランキーは酒を呑むと泣き上戸が加速するらしく、

先ほどから「バカ!泣いちゃいねぇよ!!」を連呼している。

そんなフランキーをなだめるロビンはさすが大人の女性だ。

 

 

クルー達をジッと眺めていた船長は、大きく息を吸った。

「よーーーーしっ、お前ら!!よっく聞けよ〜〜〜!!」

そう言うと、テーブルの上によいしょと上った。

 

「ルフィ・・・誰よ、あんなに呑ましたのは。」

「お前だろうが。」

 

かなり酔っているらしい船長は、その割りにしっかりとした口調で話し始めた。

 

「俺は、海賊王になる!!」

 

いつも公言している船長の夢。

 

「ゾロ!!お前は世界一の大剣豪になれ!!」

 

「ふっ、お前に言われるまでもねぇよ」

 

「ナミ!!お前は世界中の海図を書け!!」

 

「当然よ!!私はやると言ったらやるのよ!!」

 

「ウソップ!!お前は勇敢な海の戦士になれ!!」

 

「おうよ!!エルバフの巨人達みたいにな!!」

 

「サンジはオールブルーを見つけろ!!」

 

「ああ、必ずあるに違いないからな!!」

 

「チョッパーはおまえ自身が万能薬になれ!!」

 

「おう!それがドクターの願いでもあったからな!!」

 

「ロビンは真の歴史の本文を見つけ出せ!!」

 

「ええ、それが私の使命と思っているわ。」

 

「フランキーはこのサニー号を最後の最後まで見届けろ!!」

 

「あったりめぇよ〜〜!!このスーパーな船は俺の夢の船だからな!!」

 

「ブルックはラブーンとの約束を必ず果たせ!!」

 

「ヨホホ、そうさせていただきますよ。」

 

 

 

そこまで言うと船長はテーブルの上にあぐらをかき、視線を落とした。

そして先ほどとは打って変わって低い声で、皆に言った。

 

「いいか、お前らの夢は、今日この日から船長命令になった。

 何が何でも、その夢をみんなには果たしてもらう。」

 

一瞬、皆の表情が固まった。

何を言い出すんだ?そんな心境だった。

 

「だから・・・俺の許可なく、船を降りたり、いなくなったり、大怪我したり、

 ・・・死んじまったり、そおいうのは絶対許さねぇからな。

 お前らの夢は、船長命令で、俺の夢でもあるんだからな!」

 

顔を上げた船長は、シシシと笑い、そのままひっくり返ってしまった。

心配して駆け寄るクルー達をよそに、幸せそうな寝息をたて始めた船長。

 

「ったく、そんなのは当たりめぇだろうが。今更何言ってやがるってんだ。」

「そうよね。でもあんたは大怪我してるじゃないの。しかもしょっちゅう。」

「うるせぇよっ。」

「俺も船降りたりして心配かけたからなぁ。」

「クソ能天気な振りして・・・かわいいとこあるじゃねぇか。」

「ルフィだって、大怪我したりしてるのにな。こっちの身にもなって欲しいよ。」

「ふふふ、そうね。私も勝手にいなくなったりして、みんなには迷惑を掛けたわ。」

「そ〜〜れにしても、まあ船長命令たぁ恐れ入ったぜ。」

 

「ヨホホ、ホントに良い船長さんですね。」

 

「「「「「「「「当然!!」」」」」」」」

 

 

 

眠る船長を囲むクルー達は、顔を見合わせて微笑んだ。

この幸せそうな船長に、悲しい思いをさせてはならない・・・・

クルー達は、船長命令を守るべく、誓いを立てた。

船長の誕生日。

今日この日から、クルーの夢は船長命令で、船長の夢で・・・海賊団の夢となった。

 

 

 

 

 

 

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2008年ルフィ誕。
船長感謝祭お題のひとつです。