太陽ルフィ

    

 『太陽と月』

 

「なんだよ、ゾロのやつ。絶対に許さねぇんだからな!」

航海の途中、立ち寄った町をルフィは一人で歩いていた。

些細なことで、ゾロと喧嘩をし、

お互いに引っ込みが付かなくなってしまった。

ホントに些細なこと、それは分かっていたのだが、

やっぱり自分から謝ることは出来ない。

腹立ち紛れに町へ飛び出した。

何をする当てもないので面白くもなんともない。

「ウソップと出てくれば良かったかなぁ。」

そう広い町でもないので、商店街も何周かしてしまった。

 

「ちょいと、そこの麦わらのお兄さん。」

 

誰かに声を掛けられて立ち止まる。

辺りを見回すと、占い師と思われる女が、

路地裏に入る手前で店を出していた。

 

「随分と暇そうだねぇ。あたしも客が来ないから暇でさ、ちょっと寄ってかないかい?」

いかにも胡散臭い雰囲気の占い師だ。

「俺、金持ってねぇぞ。」

「いいんだよ、暇つぶしなんだから。」

どうしようか、ルフィは少し悩んだ。

 

「オメェはすぐに何でも顔を突っ込んでトラブルに巻き込まれるんだから、

よく考えて行動しろよな!」

 

以前ゾロに言われた言葉を思い出す。

「大体ゾロはシッケーなんだよ!」

ルフィは占い師の話に乗ることにした。

 

「お兄さん、随分と不機嫌そうだったけど、なんかあったのかい?」

占い師にそう聞かれて、ルフィは喧嘩をリアルに思い出してしまった。

「ゾロのやつが分からず屋なんだよ!」

「おや、喧嘩かい?」

ニコニコしている占い師に、何だか余計に腹が立ってくる。

「あんなやつとは思わなかった!仲間にすんじゃなかったよ!」

 

本気ではない。

本気である訳がない。

自分でも分かっていた。

ゾロ以上の仲間はいないのに。

そう思えば思うほど、つまらないことで喧嘩をしてしまった自己嫌悪と、

ゾロに対する腹立たしさでいっぱいになる。

 

「そうかい。」

ニヤリ、と占い師は笑い、何かを取り出した。

「なんだこりゃ。」

「知らないのかい?水晶玉さ。」

不思議な輝きの水晶玉。

「キレーだな。」

ルフィは素直にそう言った。

「この水晶はね、普通とはちょっと違うんだよ。」

そもそも、普通の水晶がどんなものか分からないルフィは首を傾げた。

「普通はね、誰かの過去や未来、それから探しているもの、

そんなものが見えたりするのさ。」

へースゲェなぁ、ルフィは開いた口が塞がらない。

「この水晶はね、もしもの世界を映し出すのさ。」

「もしもの世界?!」

なんだか面白くなってきたルフィは身を乗り出す。

 

「もしも、あんたの言うように、そのゾロってのを仲間にしなかったらどうなってたのか、

見てみたいと思わないかい?」

「え?!」

口にして言ってはみたものの、正直全然想像してなかったルフィは返答に迷った。

「どうする?見る見ないはお兄さんの自由だよ。」

意味深な物言いに、ルフィはこの占い師に自分の心中を見透かされているような

気がして動揺した。

「み、見るさ。」

ニヤニヤと笑いながら、占い師は水晶玉に手をかざした。

「ふふん、ゾロは最初の仲間なんだね。」

「げ!なんで分かるんだ!?」

占い師は笑いながら手をヒラヒラとかざし続ける。

「それじゃ想像してごらん。ゾロじゃなくて、二番目に仲間になったやつのことを。」

「ん、ナミのことだな。」

「そのナミってのが一番最初の仲間だったらどうなのか、見てみようかね。」

ルフィは水晶玉を覗き込んだ。

自分が見える。

ナミが見える。

あれ?

ゾロが見えるぞ?

「なぁ、ゾロいるぞ?」

「おかしいね、そんなハズはないんだけど…」

占い師は首を傾げた。

少し考えて、何かに思い当たった顔をした。

「試しに他の仲間で見てみようじゃないか。」

ウソップ。

サンジ。

チョッパー。

ロビン。

フランキー。

ブルック。

どのクルー達が一番最初の仲間なったとしても、必ずゾロがいる。

と言うより、ゾロが必ず一番最初の仲間になっている、そんな感じだ。

「どうなってんだ?故障か?」

「壊れやしないよ、水晶はね。」

何か確信を得たような顔で占い師は言った。

「じゃあなんでだ?お前、失敗したのか?」

「違うよ、失礼なお兄さんだねぇ。」

占い師は咳払いをすると、真剣な顔付きになった。

「あんた達は、『対なる者』なんだよ。」

「『対なる者』?何だそりゃ?」

「元々の魂は一つ。生まれる前に訳あって二つに別れてしまった者同士。

別々の人間であっても、元が一つだから引き合う力が働く。

何年かかっても必ず出会う。そして、離れることはない。」

訳が分からない。

ルフィは眉間に皺を寄せて聞いていた。

「俺とゾロが一つって、全然感じが違うぞ?」

「二つになると言っても、同じものが二つ出来る訳じゃないよ。

そうだね、差し詰め陽と陰、太陽と月ってとこかね。」

そう言えば。

思い当たらない訳でもない。

全く違う、むしろ正反対の性格なのに、ゾロと俺は言わなくても通じているとこがある。

不思議と直感的に行動している時ほど、ゾロと俺は互いを理解している。

 

「あたしの言うことはあくまでも占い師の間で言われていることさ。

ホントかどうかなんて、誰も確かめられない。」

「お前、ホントに占い師か。」

占い師は苦笑いする。

「信じるか信じないかは、お兄さん次第ってことさ。

実際のとこ、あたしも『対なる者』に会うのは初めてだからね。」

月ゾロ

 

占い師は満足気に笑うと

「いい体験をさせてもらったお礼に、いいもの見せてやろう。」

もう一つ、水晶玉を出した。

占い師が手をかざすと…

 

「ゾロ!」

何やら、必死の形相だ。

「俺を…探してるのか?」

「そうみたいだね。」

「ああ!ゾロ、そっちは山だって、町は反対方向だ!!」

ルフィは慌てて山の方へ、駆け出した 。

「あ、なんか色々教えてくれて、ありがとな。」

立ち止まって振り向いたルフィは占い師に礼を言った。

が、

「…あれ?どこ行った?」

さっきまで、占い師がいたはずの場所に何もない。

辺りを見回すが、それらしい人もいない。

「なあ、さっきまでここにいた胡散臭い占い師知らないか?!」

近くで店を出していた男に聞いてみる。

「占い師?知らないなぁ。この町に占い師なんていないと思ったがね。」

じゃあ、俺が見たのは?

ルフィは首を傾げた。

 

「あ!ゾロ!」

山に向かっていたゾロを思い出す。

夢じゃない、と思う。

ゾロが俺を探している。

確信のようなものを感じる。

何だか分からないが、忘れかけていた大事なものを取り戻した、そんな感じだ。

「誰か知らねぇけど、サンキュー!!」

 

ルフィは駆け出した。

ハッキリとした場所は分からない。

でもきっと、ゾロのとこへたどり着く。

俺達は『対なる者』なんだから。

 

 

 NOVEL TOP

 



ねづみさんのリクエスト?によって、初めて挿絵なるものを描いた作品です。
うん、イメージどおり?
月ゾロは描いていて楽しかった!!
私の中のルフィとゾロは、こんな関係なんですww