『その日まで』

 

 

「ゾロ。」

背中合わせのルフィが俺を呼ぶ。

「なんだ。」

返事はなく、その変わりに刀を持つ俺の腕を掴んだ。
その手から。
生暖かい、嫌な感触。

「ルフィ、随分とやられたな。」
「ああ、アイツらなかなか手強いな。」

俺の手を伝い、滴り落ちる赤い体液。
その量からしてかなりの怪我だ。
早く手当てをしねぇとヤバい、チョッパーでなくても分かる程の。
だが、こんなになっても負ける気がしねぇから、不思議なヤツだ。
無論、俺だってむざむざやられる気はねぇけどな。

ルフィの肩が小刻みに揺れる。
笑ってやがる、この状況で。

「ゾロの考えてることは、良く分かるからな。」
「…そうか。」

肩越しにルフィを見る。
ルフィもまた、肩越しに俺を見る。
ルフィのその笑み、その瞳、その鋭さ。
どれをとっても申し分ない。
正に――覇王。
俺の海賊王。



「いくぞ。」
「ああ。」

ただそれだけで―――。

俺達は通じ合える。
お前が何をしようとしていても、本能がすべてを理解する。
俺が何かをしようとしなくても、身体がお前に反応する。
だから。
言葉なんていらない。
お前がいてくれたら…それでいい。

夢を叶えた、その後も。

命果てる、その日まで。

 

 


 

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