『桜、桜 2』


 

「馬鹿だなルフィ、そりゃあもうちょっとで命獲られるとこだったんだぞ?!」


緑色の桜を見に行って、桜のヤツに会って。
意気揚々とうちに帰ったらエースがそう言った。
「え?そうなのか?!」
なんでも、
あの桜の下で死んでいた者もいて、もののけに出会った者は必ず身体の不調を訴え、回復するのに数日かかるらしい。
「ふーん。そんな風には見えなかったけどな?」
ルフィは首を傾げた。
現に自分は何ともない。


桜のヤツ。
綺麗だった、スゲー綺麗だった。
来年って言ってた。
うん、約束したんだ。
きっとまた会える。


たまに、約束よりうんと早いと分かっていて桜を見に行った。
待ち遠しくて、待ち遠しくて。
その気持ちを桜に伝えたくて。
数回通っているうちに、あることに気が付いた。
「葉っぱ…全然ねぇな…」
辺りは新緑の頃で、普通なら桜も葉を生い茂らせているはずなのに。
胸騒ぎがした。
まさか、まさか。


「…桜…おい、桜っ!!居るんだろ?!なあ、居るんだろ?!返事してくれよ!!」
風で、微かに枝が揺れていた。
だが、その幹に、生気は感じられなかった。
なんでだよ、約束したのに!
桜は枯れているように見える。
数ヵ月前にはあれほどの花を咲かせていたのに。
何で?
…俺のせい?
エースの話を思い出す。
他の村人達と自分の違い。


オレダケナントモナカッタ…


なぜ自分だけが何ともなかったのかは分からない。
だけど、今の桜の状態は自分のせいだとルフィは思った。
「おい桜、俺のせいなんだろ?何で俺だけ何ともねぇんだよ。なぁ、俺は…お前に会いてぇのに!!」
何も応えない桜。
何度も何度も、幹を手で擦り、抱き抱え。
それでも桜は表れないし、何も応えない。


「俺…もう一回、お前に会いてぇのに…約束、したじゃねぇか…」

ルフィは眠った。
桜の下で。
離れたくなかった。
桜にもう会えないのかもしれない、そんな想いを打ち消したくて。


夢を見た。
ふわふわと誰かに抱えられて、ものすごく心地よくて、その誰かに擦り寄る。
『…ルフィ、俺は初めて存在していたいと思うようになった。お前が…』


目を覚まして辺りを見回す。
「…桜?桜?!」
幹に触れて何度も叫ぶ。
もう一度、姿を見せてくれよ…頼むから!!
枝が揺れた。
風もないのにザワザワと揺れる。
ルフィはその枝を目を凝らして見た。
「あ…葉っぱ!!」
また、ザワザワと揺れた。
桜、お前、ちゃんと生きてんだな。
そか、力を蓄えてんだな。


「桜…ゆっくりでいいよ。そんで、また会おうな。」
枝が、また一段と大きく揺れた。
幹に触れている手の部分が熱く感じた。


『…ルフィ…』


耳元で声がした。
「今度会ったら、桜、名前教えてくれよな!」

 


ルフィが見事に咲き誇る桜と、桜のヤツと再び出会うのは、
更に数年後のこと。




 



去年、緑色の桜、御衣黄(ぎょいこう)を見て書いたSSの続きです。
続編書くつもりなかったんだけど・・・・なんか書いちゃったw
ここまで書いて満足してたんですけど、「再会後が気になる」とひかるこさんに言われて・・・。
ただ今思案中です。

2010.04.11

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