『俺がそうさせた』

 

 


「なあゾロ。今日の見張り番、代わってくんねぇか?」

ウソップがこんなことを言ってくるのは珍しい。
ウソップは意外とロマンチストなので、
静かに星を眺めることが出来る見張り番が苦にならないと言っていたのに。
「構わねぇけど…珍しいな。」
ウソップがにっこり笑う。
「サンキューゾロ。だって今日はゾロの誕生日だろ?」
「は?」
それとこれにどんな関係が?
「がっつり呑みてぇからな!ゾロはいくら呑んでも酔わねぇから問題ねぇもんな!?」
「…なるほど。」


恒例の誕生日会。
毎年のことだが、正直まだ慣れない。
酒がたらふく呑めるからいいか、くらいな感じでいる。
でもまあ…
一味の連中があれこれプレゼントを考えてるらしき姿はなかなか面白い。
大抵数日前から何やらこそこそし始めるが、ルフィなんかは直接聞いてくる。

 

そのルフィが、今年はまだ聞いてこない。
別に何かプレゼントがないとどうだって訳じゃねぇけど…
いつもと違う態度になんつうか、スゲェ違和感だ。


宴になると、主役なんかほったらかしで騒ぎ出す。
そんなばか騒ぎも、一人二人とダウンして終息に向かう。


ぐるっと見渡して、ダウンしてしまった連中を部屋まで連れていく。
ウソップ、本気でがっつり呑んだな(笑)
「ん?ルフィは?」
「さあ、知らないわよ。どっかで寝てんじゃないの?」
「…ナミ、全く酔ってねぇな…」
「そんなに呑んでないもの。」
…嘘つけ。
一番呑んでたのはおめぇだろが。
そんな言葉を飲み込んで、ルフィを探して船の中を歩き回る。
変だな…いねぇ。
アイツまさか海にでも落ちたんじゃねぇだろうな。
嫌な予感が頭をよぎった。
待て待て、落ち着けよ俺。
…そう言えば、見張り部屋をまだ探してねぇか。


「お!遅かったな、ゾロ!!」
「…お前な…なんだってこんなとこに…」
言い掛けて、止めた。
コイツに常識的なことを求める方が間違ってんだ。
「ゾロを待ってたんだ。」
「…待ってた?」
「おう。」
ニコニコと笑い、俺の前に何かを取り出した。
「ん?…シャンパンか…って、これスゲェ上物のシャンパンじゃねぇか!?」
「ゾロにプレゼントだ!」
「プレゼント?」
照れ臭そうに笑うルフィに、何だかこっちまで照れてしまう。
「そ、そうか。悪りぃな、いただくよ。」


シャンパンを開けて、2人で乾杯して。
「どうだ?」
「ん、旨いな。」
「そか!良かった!」
窓から見える黒い空と海。
星だけが浮かび上がるように見えていて、なんだか不思議な気分だった。
ルフィとこうして向かい合って呑むのも、あまりねぇことだし。


「ゾロ…あのな…」
ふと気付くとルフィの様子がおかしい。
なにがどうって…俺と目を合わせず、ソワソワとして落ち着かねぇ。
「なんだ、どうかしたのか?」


えーと、えーと…だから…その…


ルフィらしくない態度になんだか俺まで居心地が悪くなる。
「なんだよ、なんかあんのか?」
「…ナミに聞いたんだ。」
「は?ナミ?」


つまり。
ナミに好きなやつに好きと言いたいがどうしたらいいかと尋ねたら、
誕生日の夜に素敵な景色を眺めながら美味しいシャンパンで乾杯して
「好きだ」なんて言われたらイチコロよね〜と言われた…


しどろもどろ話すルフィの話を繋ぎ合わせると大体そんな感じで。
ナミのやつ、またルフィをからかいやがって…
もしかしてウソップも一枚噛んでんのか?
なるほど、それで納得だ。
ん?
んん?
おいおい。
今なんかおかしいとこがなかったか?
好きなやつにどうとかって…


「俺、ゾロ好きだ。」
「は?」


さっきとは打って変わって、真剣な顔つきのルフィ。
「ちょっと待て、ルフィ…」
「お前がケガしても、死にそうになっても、俺から離れないでいてくれるなら、
 俺は耐えることが出来る…だけど…」
歯を食いしばり、泣きそうに、震える声で話続ける。
「こないだ、ゾロが目の前でくまのやつに消されちまった時、俺どうにかなりそうだった。」


視線を落として、手はグッと握られ、小さく震えるルフィ。
これがルフィか、あのルフィなのか?
そうさせているのは、他ならぬ『俺』だと言うのか?


そう思った瞬間、心が歓喜に震えるのを感じた。
ジワジワと、熱が身体の表面ににじみ出て来て、肌が赤身を帯びてくるのが分かった。
言葉が出て来ない。
何も言えなくて。
ただ、ただ、嬉しかった。


「…ゾロ」
その様子を見ていたルフィは、ゆっくりと俺の頬に手を伸ばし、優しく微笑んだ。
「ゾロじゃないみたいだ、こんな真っ赤になって。」
「だ…誰のせいだよ…」
「ん…俺だよな。」
ルフィの顔が近付いて、頬に唇が触れて。
「離れねぇよ、二度と。」
唇にキスされて。
「それはこっちの台詞だ。」
と言うと、ルフィはいつもの笑顔を見せた。

 

「やっぱナミの言うとおりだったな!」
ルフィは満足そうだけど、確かに今回はそうなんだけど。
何だか嫌な予感とか色々するのは何故なんだろう。

 


 



ゾロ誕生日おめでとーーーー!!って当日するつもりだったのに、
体調不良のため、3日も遅れてしまいました・・・。
祝う気持ちは十二分にあるので許してね、ゾロ!
私が書くゾロとルフィは、必ずルフィがぞっこんで、ルゾロ気味になります。
私がゾロにぞっこんだからね!
とにかく、ゾロおめでとう!!
生まれてきてくれてありがとう!!!
何度でも叫ぶから!!!!

 

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