『 無自覚 』


買っちゃった。
買っちまった。
何をって、チョコレートだ。
サンジが言ってた。
バレンタインって、大好きなやつにチョコレートを渡して告白する日だって。
…これを渡したい。


「……なんだ、ルフィ。」
「へ?え?」
昼寝をしていたゾロが、目も開けずにそう言うから驚いてしまった。
「人が寝てる周りをそうぐるぐる回られたら寝てらんねぇっつんだよ。」
「…そっか、そりゃすまなかったな。」
「そうじゃなくて、なんだって言ってるんだ。」
言葉に詰まる。
さっきまで、ゾロが起きたらチョコレート渡して好きだって言おうって思ってたのに。
言えねぇよ。
後ろ手に持ってるチョコレートを前に出す事さえも出来ねぇ。


おれってこんなだったか?


「何持ってんだ?」
ゾロに言われて我に返った。
ゾロの深緑の瞳がおれをジッと見つめていた。
「や、あ、あ!ちょこ!!ちょこれーと!!」
「ちょこれーと?」
「そ、そうだ!ゾロ食うか?甘くてうめぇぞ?!」
ゾロの眉間に皺が寄る。
「甘いもんは苦手。知ってんだろ。」
「あ〜…そだったけか?」
だあぁぁぁ…おれうっかりし過ぎ!
ゾロがチョコレート食うわけねぇよなぁ…。
「じゃあ…おれ一人で食う!」
「…お前が食いもん分けてくれたことがあるかよ(笑)」
ゾロが笑ってくれたから、まあいいか、と思った。
ちょっと残念だけど、ちょっと嬉しくなった。
チョコレートが、何倍も旨く感じた。


「ルフィ。」
「ん?なんだ、ゾロ。」
「口のまわり、付いてるぞ。」
「んん?どこ?」
ゾロがしょうがねぇなぁとおれに近付いた。
そんで顔を近付けるとおれの口の周りをベロリと舐めた。
「…あめぇ……でもまあ、後味はいいか。」
「な!旨いだろ?!」
ん、と頷いてゾロはまた寝転がった。
「もう飯まで起こすなよ。」
「おう!気を付けるな!!」
「…努力要請じゃねぇよ、すんなっつったんだ。」
目をつぶったままそう言って、すぐにスゥスゥと寝息が聞こえた。



ゆっくりとゾロから離れると、ナミとウソップがこっちを見てるのに気が付いた。
「おう、どうした?!」
「…なんか馬鹿馬鹿しい。ホントにバカップル!」
あれ?何だか怒ってる?
つかつかと部屋に入ってしまった。
「ナミなんで怒ってんだ?バカップルって食いもんか?」
「…俺もナミの意見に賛成。」
ウソップは苦笑いして、ウソップ工場へと向かって行った。


何がなんだか分かんねぇ。
「んー?」
首をひねって考えてみるも、よく分からない。



「ま、いっか。」



今おれは、すこぶるご機嫌なんだから。


 


2012.02.14


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2012バレンタインSSです。いかがでございましょうか?w
ゾロとルフィは絶対無自覚のバカップルだと思うんですよね。
違いますか?
違いませんよね?w

実に一年以上SSをアップしてませんでした。
書いてなかった訳ではないんですが、まあいろいろね〜
少しずつ整理して、またアップしていきたいと思います。


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