『後悔していない』

 


気が付いたら好きだった、なんて、よくある恋の始まり。
そして。
恋の終わり。

アラバスタを助けたい、守りたい。
そんな思いで無我夢中だった。
戦いの後のルフィさん達を見たとき、なんてことに私は巻き込んでしまったのだろうと、
今更のように思った。
みなさんボロボロなのに、私の心配ばかりしていて。
ルフィさんはなかなか目覚めないし。

そんな思いでいっぱいだった時。
「ビビ、そんな顔すんな。」
「…Mr.ブシドー。」
「お前がそんな顔してっと、アイツらも同じ顔になるだろうが。
 お前、王女だろ。察してやれよ。」
言葉はぶっきらぼうだけど、穏やかに、諭すような、そんな表情で。
ああ、Mr.ブシドーは、こんな一面も持っていたのね。

静と動。
それがMr.ブシドーの印象だった。
静かに黙々と鍛錬をするか休養をしてるか。
多くは語らない。
それが一度戦闘の場に出れば、何かスイッチが入ったかのように別人になる。
それはまるで獣のように。
強くなるために、貪欲に。
仲間のために、何をも厭わない。

「そうね…あなたの言う通りだわ。」
何かを言う代わりに、あなたは優しく微笑み、背中をポンと叩いた。
あなたに初めて向き合った気がした。
身体の奥、ずっとずっと奥。
思い出してはいけない感情が沸き上がってくるのを感じた。

ウイスキー・ピークでの100人斬り。
あの時のあなたは、恐ろしかった。
強く、そして美しく、妖艶だった。
月夜に舞うように戦うあなたの姿に心が動きそうになるのを感じた。
そんな想いを閉じ込めるために、私は決して名前では呼ばなかった。
いえ、呼べなかった。
再び心が動き出すのではないかと、恐れていたから。
そんな風にして、閉じ込めた想いが、今甦る。


同時に。
これ以上、育んではいけない感情であることも気付いていた。
世界一の大剣豪を目指す男。
アラバスタ王女。
私達の進む道は、余りにも掛け離れている。
私は、この国を捨てる訳にはいかない。
そのために今まで戦って来たのだから。
愛するこの国を、民を。


あなたが夢を追い掛けるように、私も私の夢を追う。
Mr.ブシドー。
私は後悔していない。
あなたを好きになったこと。
あなたではなく、国を選んだこと。
いつかきっと胸を張って、ちゃんとあなたに向き合う為に。

 

 

 

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初めて書きましたね〜ビビ!!
ホントはハピエン主義者なので、ビビの恋も成就して欲しいとこですが、彼女にゾロは似合わないなと。
や、このカプを否定するわけじゃないですよ。
ビビにはアラバスタで頑張ってほしいなと。
そんな思いからです。
あ、一応、ビビ誕SSってことで!!
どこが?!