『聞いてくれ』



ゾロ。
ナミ。
ウソップ。
サンジ。
チョッパー。
ロビン。
フランキー。
ブルック。


聞いてくれ。
エースが死んだ。
兄ちゃんが死んだ。
俺が最も尊敬する身内が死んだんだ。
正確に言えば身内じゃねぇし、俺自身、そんなんに拘って生きて来た訳じゃねぇ。


でも、エースが処刑されると聞いた時、何が何でも助けたいと思った。
おまえらとどっちが大事だとか、んな難しいことを考えてなんかなかった。
ただ、助けたかった。
死んで欲しくなかった。
生きて、俺と海賊王を競って欲しかった。
俺と競うのは、絶対エースだと思ってたから。


エースは死んだ。
俺の腕の中で。
俺は助ける事が出来なかった。
ただ、死んでいくエースを見ているしか出来なかった。
どうしたらいいのか分からない、そんな思いが身体中を駆け巡る。
そこから、まともな記憶なんて残っちゃいないんだ。


だけどな、俺は間違っていたとは思ってねぇよ。
おまえらを捜し出すより、エースを助ける事を優先した事を。
結果的にはエースは死んじまったけど、それでも後悔はしてねぇよ。
駆け巡る絶望は、そりゃあ身を切り刻まれるような思いだったけどな。


聞いてくれ。
こっからがおまえらに聞いて欲しい事なんだ。
俺は海賊王になる。
俺は何も変わらない。
変わったからこそ、変わらない。
んん?
なんか俺、訳分かんねぇ事言ってるか?
上手く言えねぇけど、そんな感じなんだ。


俺は絶望を見た。
大事な者を失った。
だからこれ以上、俺の大事な存在を失うことは絶対にしない。
おまえらの、誰か一人でも失う訳にはいかねぇんだ。
おまえらを、変わらず信頼し続ける。
おまえらを、変わらず愛し続ける。
今まで以上に、おまえら一人一人が大事なヤツなんだって思う。
それはエースが教えてくれた事。
刻印のように、俺の心に刻まれたんだ。
そうだ、
それが俺自身変わった事なんだ。


だからな、
遠く離れようが、何しようが、
忘れんなよ。
俺達は、同じ海賊旗の元に集う仲間なんだ。
俺達は、
麦わらの一味なんだ。
それは、今までと変わらない、これからも変わらない。




俺達は、
麦わら海賊団なんだ。


 

 


友人の、深い深い絶望に。
切なくて辛い、焦燥と諦めに。

2010船長誕SSです。
らしくないかも分かりません。
今の本誌の展開に「冬の時代」と名打つのなら、
きっと春がやってくるに違いないと信じて書きました。
ルフィは『麦わら海賊団』以上に大事なものなんてないはずだから。
サニー号で、再び集う。
その日まで。


一日早いですが、ルフィ!誕生日おめでとう!!


2010.05.04


 

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