『Happy  Wedding』

 

 


「訳分かんねぇなぁ?!」
首を捻りながらルフィが呟く。
その手には…
「…お前、そら何なんだよ。」
「あ?貰った。ビビに。」



アラバスタ王国の再建に奔走していたビビが、結婚すると連絡を寄越したのはつい一ヶ月前のことで。
俺達は結婚式に招待され、密かにアラバスタにやって来ていた。
海賊王とは言え、やはり海賊は海賊。
一国の王女が表立って招待する訳にはいかなかった。



その結婚式にさっき迄みんなで出席していた。
そのルフィの手には綺麗な花束が持たされていたのだ。



「何だってお前にそんなもん。」
「ビビがな、ゾロと幸せにって渡してくれたんだ。」
「はあ?」



『Mr.ブシドーといつまでも幸せにね。』



…ビビのやつ、気が付いてたのか、俺達のこと。
俺達が…つまり、そんなことになったのは随分と昔のことで。
どちらからともなく、自然にそうなった。
だけどルフィは、絶対に一味の連中に知られないようにしていた。



「ゾロ、俺は船長だからな。」



そう言って、いつも切なそうに微笑む。
船長だから、一味の誰か一人を特別扱いにするのは好ましくない。
それは俺にも理解出来た。
それでも誰に言えない恋ってやつはそんなに楽なもんでもなくて。
言いたい。
話したい。
でも──────



ビビが気付いていたのには驚いたが、そのことをルフィがそれ程気にしていないことにも驚いた。
「ルフィ、いいのか?バレてたんだぞ?」
ん?いいんだ別に、何でもない顔をして。
「俺が話したんだから。」
「はあ?!は、話したって…何で?!」
「ビビは…今は一味じゃねぇからな。すっかりオウジョさまだ。」
ルフィがそんな風に思ってはいないことは分かっていた。
誰よりも仲間を大事に想うルフィ。
今だって、きっと共に航海して欲しいと願ってるに違いない。
そんなビビに話したのは、
仲間である心安さと、
誰かに話したかった秘密の想い。

ほんの少し複雑な心境になっていると、ルフィがニヤリと笑って俺の顔を覗き込んだ。
「妬けるか?」
「はぁ?んな訳あるかよ。」
咄嗟にそう答えたが、クスクス笑うルフィに上手く隠し通せていないことは明らかだ。



「だからさ、俺訳分かんなくてさ。」
ブーケを眺めながらルフィは言う。
そうか、ルフィは知らないんだな。
花嫁のブーケに込められたジンクス。
各言う俺だって、ナミが言ってなきゃ知らなかったんだが。
教えてやるべきかどうか、ちょっと考えていたら、ルフィはやはり不思議そうな顔をして言った。



「俺、今ゾロと一緒にいて幸せだもん。これ以上幸せって、よく分かんねぇ。」



開いた口が塞がらなかった。
そしてじわじわと顔が赤くなっていくのが分かった。
「ゾロは違うのか?幸せじゃねぇのか?」
「は?あ…いや、幸せ、だな。」
「だろ?これ以上幸せって、訳分かんなねぇよなぁ。」
なんだかおかしくて笑いたくなる。
ルフィが真剣そのものだから尚更そうだ。



「だな。訳分かんねぇな。」
そう言うと、ルフィは満足そうにニッコリ笑った。


 


 

ひかるこさんの姪が結婚されたって聞いて。
降ってきたWeddingネタ。
これ書いて、私の中でルフィ像が変わったかもしれません。
幸せで、切ない。
これが私の信条です。

同ネタで振りでも書いてます。
よろしければ振り部屋へもどうぞw


2010.05.29

 

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