『笑顔の理由』 

 

 

「おい、ゾロっ!」
「んあ?なんだ、ルフィ。」

昼寝をしてるとこを起こしておいて、ルフィはニコニコしながら何も言わない。

「なんだよ。何か用があんじゃねぇのかよ。」

それでもルフィはニコニコ。
訳分かんねぇ。
何か意味ありげな笑顔に当惑するばかりだ。
俺は腕を組み、考え込んでしまった。


 

「ねえ、ちょっと。あれ何よ。」
「知らね。いつものイチャイチャじゃねぇの?」
麦わらの一味にとって、船長と剣士がベタついているのは日常茶飯事。
特段珍しいことではない。
「だって、それにしてはゾロが難しい顔してるわよ?」
「…確かに。眉間の皺が怖ぇ。」
「でしょ?」
いつもなら、あのゾロが?!と我が目を疑うほどに優しい顔をするのに。
ナミとウソップは、いつもと違う日常に首を傾げた。


 

「ルフィのヤツ、ロビンちゃんにそんなことを聞いてきたんですか?」
「ええ。頭の上にハテナが沢山あったわよ(笑)」
「で、ロビンちゃん答えたんですか?」
「もちろん、私がルフィにしてあげられることの一つだもの。」
知っていることは惜しみなく伝えたい、ロビンはいつもそう思っていた。
「ロビンちゃんの手を煩わすなんて、ルフィのヤツ。」
腹立たしげにサンジが言うと、ロビンは「あら、」と言った。
「サンジがそうさせたようなものじゃない?」
サンジはバツが悪そうに人差し指で頬を掻いた。


 

「なあなあ、フランキーはバレンタインデーって知ってるか?」
「ああ?!なんだそりゃ。」
フランキーの力仕事の手伝いはいつもチョッパーがする。
背丈も丁度よく、何より一生懸命に手伝ってくれるからだ。
「さっきルフィが言ってたんだ。好きな人にチョコをプレゼントする日なんだぞって言ってた。」
「へぇ〜、そんな日があるのか。」
「でもよく分かんねぇんだ。」
「ああ?何が??」
チョッパーが首を傾げ、フランキーも傾げた。
「じゃあ俺ルフィにあげるって言ったら、その好きじゃねぇって。で、ゾロんとこへ行っちまったんだ。」
「……なるほどな。」
「フランキー、分かるのか?!」


 

バレンタインデー。
そんな風習があるんですねぇ。
麦わらの一味の新参者、ブルックは、皆の様子をつぶさに見ていた。
要するに、
ルフィはバレンタインデーを前にして浮かれ気味だったサンジを見て、
何を楽しげにしているのかとロビンに訪ね、
ロビンは好きな人にチョコレートをプレゼントする風習があると答えた。
それを聞いたルフィは、じゃあゾロからチョコレートを貰える日なんだなと理解して、
昼寝しているゾロを起こした。
そんな感じですね。


 

ブルックの説明を聞いた一味は溜め息をついた。
「この一件はサンジくんが責任取んなさい。」
「ええ?!な、ナミさん、何でですか?!」
「どう考えたって、ゾロがバレンタインを知ってて、ルフィの意図を汲み取るなんて出来ねぇもんなぁ。」
「私の伝え方が悪かったのかしら?」
「ロビンはいいの。私でもそうしてたと思うし。」
「別に放っておけばいいんじゃねぇか?麦わらとゾロの問題だろ?」
「うん。俺もそう思う。だってルフィ楽しそうだ。」


 

相変わらず腕を組み考え込んでるゾロを、ルフィは嬉しそうに見つめていた。
そう、何よりルフィは嬉しそうなのだ。
ゾロがいるから、こうして待つ事も出来る。
そんな想いが伝わってくる。

「なんか馬鹿馬鹿しくなってきたわ。」
「ふふふ、妬ける?」
「なっ、何で私がっ!?」
「ナミさんの想いは俺がバッチリ受け止めますっ!」
「遠慮しとくわ。」
「そんな控え目なナミさんが好きだ〜!!」


 


「ルフィ、降参。何なんだ?教えてくれ。」
そう言うと、ルフィはにっこり笑って答えた。
「今日は俺がゾロからチョコレート貰う日なんだ!」
「…はあ?」
やっぱり訳が分からない。
今度は頭を抱えてしまった。



 

バレンタインデー。
サニーでの一幕。


 



2010バレンタインSS。
書く事自体は間に合ったんですが(って言うほど間に合ってはいないけど)
アップは遅くなってしまいました。
ゾロル・ルゾロは書いてて楽しいです。


2010.02.17


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