『誰のせい?』

 

一ヶ月も前から、俺はゾロに言っていた。
「ゾロの誕生日は、絶対二人で祝おうな!」
「ああ、楽しみにしてるよ。」


───────────────


「ねぇねぇ、ウソップくんに頼みがあるんだけど。」
「え?なに?」
クラスメイトの女の子が、何やら照れ臭そうに話し掛けてきた。
「もうすぐロロノア先輩誕生日じゃない?」
心臓がバクンと鳴る。
「ああ、確かそうだったような…」
ホントは誰よりも早くから、祝う気満々だったんだけどしらばっくれる。
「プレゼントしたいんだよね。ウソップくん、ロロノア先輩と仲いいでしょ?」
「…まあ、ね。」
仲いいなんてもんじゃねーけどな、付き合ってるし。
「プレゼント、一緒に選んでもらえないかなぁ?!」
「ええ?!」


…結局押し切られる格好で一緒に選ぶことになった。
いや、断れなかった自分が悪いんだけどな。
人に頼まれると嫌だと言えないし、
一旦引き受けると、とことん頑張ってしまう自分に心底呆れてしまう。


(ゾロこんな帽子欲しがってたな…)
(あ、このバンダナ似合いそう。)


適当に選べばいいのに、俺も相当お人好しだ。
「ウソップくん、ありがとう!!」
笑顔でそう言われて、
「どういたしまして。」
と、笑顔を返して。
そんな自分に凹みながらも、まあ、当然なのかもと思った。
ゾロと俺が付き合ってるなんて、絶対誰にも言えないし、ばれたらヤバいし。
何千歩譲ってそんなんが一般的にありだったとしても、ゾロと俺がなんて…
誰も想像出来ないだろうな。
全然釣り合わねぇし。

 

ゾロの誕生日当日。
俺は機嫌が良かった。
昨日ゾロが
『俺んちに放課後な』
ってメールをくれたから。
浮かれ気味に廊下を歩いていてふと窓の外に目をやると、あの子が歩いているのが目に入った。
その先にいたのは…
「ゾロ…」
今渡すんだ、プレゼント渡すんだ。
見ない方がいい、直感的にそう思った。
だけど、目が離せなかった。


後ろから声を掛け、振り向いたゾロに彼女は何かを言った。
ゾロはビックリした表情を見せたが、すぐに笑顔になった。
ものすごく、嬉しそうな笑顔。
心臓に、何かを突き立てられたような、そんな衝撃だった。
差し出されたプレゼントの包み紙を遠慮気味に受け取って…
そこからの記憶が曖昧だった。
気が付いたらゾロんちの前にいたから。


「お、来たな。待ってたぞ。」
笑顔で部屋に招き入れてくれたゾロに、俺は笑顔が返せなかった。
「どうした?具合いでも悪いのか?」
心配そうに俺の顔を覗き込む。
ゾロの顔が見れない俺は、
「何でもないよ。」
と顔を背けた。
ふと、机の横にある紙袋が目に入った。
たくさんの誕生日プレゼントと思われるもの。
その中に、見覚えのある包み紙。


「…」
「あっ…これな、断るの面倒くさくてな。」
困ったように笑うゾロ。
「…笑ってたくせに。」
「は?」
俺はこんなこと話したい訳じゃないのに。
「見てたんだ、俺。ゾロがプレゼント受け取るとこ。」
「…マジで?」
「マジで。」
その包み紙のものを取り出して、
「これくれた子、俺クラスメイトなんだ。まあ、見たのはたまたまなんだけど。」
とゾロに手渡す。
「なんかゾロ、すげぇ嬉しそうだったんだけど。」
「…あ」
そうかまいったな、見てたんだ…と口元に手をあてて真っ赤になるゾロ。
なんだよ、んな顔するなんて…そんなに嬉しかったのかよ!


「…笑うなよ…」
「…は?」
頭をガシガシと掻きながらゾロは言った。
「誕生日おめでとうございますって言われて、お前を真っ先に思い浮かべちまったんだよ。」
「…はあ?!」
更に真っ赤になるゾロ。
「だからっ!誕生日って聞いたらウソップ思い出して!
 今日は二人でお祝いだなって思ったらつい顔が緩んじまったんだよ!!」
「…」


開いた口が塞がらなかった。
何だよそれ。
じゃあ…あの笑顔って…。
唖然とする俺をゾロは引き寄せて抱き締めた。
「知ってんだろ。俺がお前にベタ惚れなの。」
耳元でそう囁かれて、一気に顔が赤くなる。
一人で勝手にヤキモチ妬いてた自分が恥ずかしくて、ゾロの腕の中でじたばたとした。


「ウソップこそ、酷いんじゃねぇの?」
「へ?」
ゾロはニヤリと笑った。
「これ、選んだのウソップなんだって?」
「!!」
逆に血の気が引いていく。
「いや、あの…その…」
「一緒に選んでもらいましたって。俺傷つくなぁ。」
「…ごめん。」
ゾロは何故か楽しそうで。
「お仕置きしないとな。」
「え?」


そのまま押し倒されて、首筋にキスされる。
「やっ…」
首筋に舌の這う感触…
ゾクッとして、身体が勝手に熱くなる。
「あ…んっ!」
ゾロの唇が胸元まで行きかけて、フッと離れる。
「…え?」
「お仕置きだからな、これでお預け。」
クスクスと笑うゾロ。
「え…そんなっ…」
熱くなりかけたこの身体を俺はどうすりゃいいんだよ?!
真っ赤になって俺は俯いた。
キスして欲しい、なんて恥ずかしくて絶対言えない。
だけど、だけどっ!


「プレゼント。」
「へ?」
「ウソップからのプレゼント。」
「あ、そうだった。これなんだけど…」
カバンから取り出そうとしたその時。
「違う。」
「…何が?」
「俺が欲しいもの。」
「ゾロが?」
頷いて、ちょっと恥ずかしそうに。
「ウソップから、キスして。」
…はい?
「ええっ?!」
「…嫌か?」
「…そんなことは…ねぇけど…」
恥ずかしくて、照れ臭くて。
今まで一度だって俺からはしたことはない。
だから、ゾロがそうして欲しい気持ちは分からないでもなかった。


「…うん…分かった。」
ゾロがジッと俺を見てめる瞳が、更にドキドキを増長させる。
「ゾロ、目つぶっててくんねぇ?」
「…ああ。」
飛び出しそうな心臓に落ち着けと言い聞かせ、そっとゾロにキスをした。
ホントにホントに、そっと。
触れるだけ。
それでもくらくらとして、意識が飛びそうで。
「誕生日、おめでと。」
そう言った瞬間。
ゾロはパッと目を開けて、また俺を抱き締めた。
「だあっ!?何だよ急にっ?!」
「ウソップ、可愛過ぎ。我慢出来ねぇ。」
「はあ?!」


結局そのまま、ベッドまで連れていかれて。
ゾロのお仕置きは、たった5分しかもたなかったのだった。


「ゾロって…堪え性がないよな。」
「うっせ。お前が悪い。」
「俺?!」

 


 

ゾロ誕SS第二弾!!
ゾロウソパラレルでっす。
ゾロウソって・・・なんかこう、甘くなる傾向にありますw
そして必ずぐるぐる系です(笑)
こんな二人がツボ。
そしてゾロ!!誕生日おめでとう!!(今更)

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