「 繋がれた手 」



触れたい。


そう思って伸ばした手が、払われずに握り返されて。
お互いに冷たい手をおそるおそる握りあって、
ゆっくりと少しずつ合わせた視線に何故か驚いて反らしてしまう。


なかなか言葉が出てこない。
口の中がカラカラで、あり得ないくらい変な汗が出てくる。
触れたくて手を伸ばしたのに、今はなんでそんなことしたんだって思う。


三橋に。
触れたいと思ったのは何故だろう。
田島が、阿部が。
無造作に三橋に触れたりするのが羨ましくて、嫉ましくて。


触れたい。


三橋に近付きたい。


三橋に対する尊敬からか、守ってやりたい兄のような気持ちからか。
……恐らくは両方なんだろう。
三橋はすげぇ。
だけど、危なっかしい。
ずっと傍にいて、頑張るアイツを支えてやりたい。
三橋が登っていく階段を、俺も一緒に登りたい。


俺も。


どれくらいそうしてたか。
不意に田島と泉の声が聞こえて、俺達は弾かれたように手を離した。
今更のように、頭に血液が集まって行くような感覚。
三橋の顔が見れない。


「あ、あの…花井、くん?」
その時三橋がか細い声を出した。
思わず三橋を見ると、不安そうに見上げる瞳。
さっきまで繋がれていた右手を大事そうに左手で包んでいた。


三橋。
それがお前の答えなんだな。


「…今度の日曜、お前んち…行ってもいいか?」
「う、うん!」


三橋の顔はやっぱり見れなかった。
きっとキラキラした瞳で俺を見上げてるから。
そんな瞳を見たら、手を繋ぐだけで満足出来なくなっちまう。




 

◇ ちょっと前に描いたハナミハイラスト のイメージで書いてみました。
    なぜか最近増えていくハナミハですww


 2010.09.12




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