『緑のセーター』
by 水城ひかるこ


阿部。
なぁ阿部。
その姿は誘ってんのか?

青い空に笑うお前。
少し大きい緑のセーターは温かく阿部を包んでる。

なぁ、そのセーターになりたいだとか。
そのセーターを引き剥がしたいだとかって、有り得ないだろ。

そんなセーターは俺に伸ばされてしまえばイイ。

そして俺のかじかんだ冷たい指先がスルリと阿部の肌を撫でて、阿部のすがるような目が俺を射抜くとイイのに。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「な、阿部?それって少しデカくねェ?」 花井に似合いそうと思って買った緑のセーターは、やっぱり俺より花井のサイズだった訳で。 「そうかぁ?似合わねェ?」 「や、似合うけど」 「けど?」 ホントは花井に着て欲しかったなんて、言えねー。 ホントは花井が着てたセーターが欲しいだなんて言えねーから。 「ちょっとその色、着てみたかったんだ。今日部活迄、交換しねぇ?」 ビックリした。 もしかして俺の願いが花井に聞こえたのかと、凄くビックリした。 「や?」 「やじゃねー」 俺は花井の気が変わる前に、大急ぎで緑のセーターを脱いでいた。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇



馬鹿、急にそんなトコで脱ぐなよ。
ほら、勢い良すぎて腹が見えるつーの!
ドキドキし過ぎるから、だからじっと見るんじゃないよ。
知ってるか?下からの視線って凶悪なんだぞ。

「はいコレ」

手渡されたセーターは、阿部の熱でホコホコに温くてほんのり阿部の匂いがして。

「お前も脱げよな」

ちょっぴり俺のセーターの端を握りしめた阿部が、とてつもなく抱きしめたくなってしまった。

「抱きしめてイイ?」
「え?」

答えを聞く前に、俺は阿部を腕の中に閉じ込めた。



●超レア、ひかるこさんのハナベだよ、ハナベ!!!
  私の描いた阿部誕イラストを見て、突発的に書いてくださった奇跡の一品です!!
 このバカップルぶり、もう最高!!
 ひかるこさん、ありがと〜〜!!


2009.12.11


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