「 そうなのか 」
「ああ?!」
「うっ…ご、めんな、さい…」
「お前謝るようなことしたのか?!!」
「ううう…」
だからさ。
ちょっとは落ち着いて話せよ、阿部。
怒鳴る阿部とキョドる三橋のツーショットは、最早西浦の一風景で。
田島や泉、それから栄口や沖なんかは口うるさいとかなんとか色々言ってるけど、
俺には阿部の気持ちがよく分かる。
俺が阿部の立場なら、まず間違いなく同じことしてただろう。
だけど、阿部の三橋への思い入れは半端なくて。
俺だって面倒見はいい方だけど、
構い過ぎだろってくらい面倒みてるから、その辺は何考えてんだかよく分かんねぇ。
確かに三橋はすげぇ。
けどすげぇで言えばやっぱ田島だし、阿部だってそうだ。
(俺だってすげぇと言われたいと思うけど)
「やっぱ、バッテリーだからか?」
そんな風に二人を見ていた。
久し振りに練習が休みで、俺は一人でブラブラと買い物をしていた。
練習練習で外出用の私服なんか着る時もないけど、
それでも流行りのものは気になるし、見ているだけで気分転換になる。
駅の前まで来たところで、
ふと見覚えのあるシルエットが目に入る。
「あれ…阿部?」
阿部にしてはえらくちゃんとした格好で、携帯を何度も何度も開けたり閉じたりしている。
「待ち合わせ、か?」
もしかして、彼女?!
なんかちょっと面白れぇかも。
そんな悪戯心満載で、そーっと近付き、肩を叩いた。
バッと振り向いた阿部の表情。
声が出なかった。
待ち合わせか?デートか?
と、からかうはずだったのに。
なんつぅんだろう、上手く言えねぇけど…はにかんでるような…そんな感じで。
俺だと分かると一瞬落胆して、直ぐ様顔が赤くなっていった。
「花井っ、お前ここで何してんだっ?!」
「何って…」
そりゃあんまりじゃねぇの?
「阿部くん、早い、ね!」
その時、後ろから声をかけられて振り向くと三橋がニコニコして立っていた。
「あれ?花井、くんも?」
笑顔で首をかしげる三橋に合わせるように、俺も訳が分からなくて首をかしげた。
「あー…三橋がスパイク買いたいって言うから、一緒に見に行こうかなって…」
「阿部くん、も、買いたいんだって!」
んん?
確かこの間、新しいの買ったって言ってたような?
うちで慣らしてから履くって言ってたような?
チラリと阿部を見ると眉間にしわ寄せて、三橋を睨んでる。
うっわ、怖ぇ…。
「花井くん、も、行く?」
にぱっと笑う三橋につられて、思わず「うん」と言いそうになって…
「あ…いや、行きたい店とかあるし、やめとく。」
阿部の怖ぇ視線が俺に向いてたから。
そう?と残念そうな三橋と真逆な表情の阿部は、ほら行くぞと三橋を急かす。
ヒラヒラと手を振る三橋に、手を挙げて応えるとまた睨まれた、阿部に。
俺が何したっつうんだよ。
普通にしてたよな?絶対。
スパイク見に行くなら俺行っても良かったのに。
あれは完璧に邪魔者扱いだった。……
もしかして、そうなのか?
そうなら、もしそうなら…
あの阿部が。
何考えてんのかさっぱり分かんねぇ阿部が。
分かりやす過ぎ。
笑い出したくなるのを抑えて、この後また偶然会わないように、早々に帰ることにした。
◇ 初アベミハ。リクエストされて調子こいて書いちゃったよ、ごめんなさい。
アベミハでも花井は外さないw
2010.07.15
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