『想うということ5』


あれから。



俺達は何も変わらない。
野球やって、教室で一緒に飯食って昼寝して。
また野球して。
たまに一緒に勉強して。
ああ、一緒に出掛けるようになったのは変化かな。



思えば、
俺達はいつも一緒にいて、共有している時間が普通よりずっとたくさんあって。
だから何も変わらない。
お互いの気持ちは分かったけれど、何も、何も変わらない。



「花井、行くぞ。」
「おお。」



だけど。
こんな一言だったり、何気ない会話や行動だったり。
たったそれだけと思うようなことが、
大事な記憶になったりして。



そんな他愛もないことが、
すごく大事で、
すごく嬉しくて。
本当に些細なことでも、
阿部の想いが伝わってくるから、
つい笑顔になる。



「阿部。」
「あ?なんだ?」
「…ありがとな。」



今こんな気持ちでいられるのは、
阿部の勇気があったからこそ。
阿部は何も言わなかったけど、俺を見て優しく微笑んだ。
この先のことなんか分からないけど、
こんな阿部の笑顔を見ることが出来る俺は、
すごく幸せなやつなんだと思う。



「花井。」
「ん?」
「…何でもねぇ。」
「…うん。」



大好きだから、すごく好きだから。
大事に大事に。
君を想う。

 




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