「仲良し」
「あ、阿部、くんは…花井く、んと仲が良い、よね。」
「…はあ?」
唐突に三橋から会話が振られ、横で花井が盛大にジュースを噴いた。
わー花井きたねー!と田島がはしゃぎ、
花井はうるせぇよっと言いながらカバンからタオルを取り出した。
そして周りに詫びながら拭き始めた。
三橋とバッテリーを組んで二年目。
去年よりはずっと三橋が考えてることが分かるようになった(と思う)し、
怒る回数も減った(と思う)。
だか、相変わらず分からねぇことは多いし、
田島や栄口の通訳がないとカッとしてしまいそうなこともしばしばある。
今日は三橋の誕生日だ。
去年のように勉強会兼誕生会をしようと三橋の家に二年生だけで集まった。
そうだ。
主役は三橋なんだ。
その三橋に、なんで俺と花井の仲の話を今されないといけないんだ?!
…やっぱり訳分かんねぇ。
分かりやすい反応をする花井と足して二で割って欲しいくらいだ。
「お前の話は唐突で訳分かんねぇよ。別に俺と花井だけじゃなくて、みんな仲いいじゃねぇか。」
溜め息を付きながら答える。
三橋はあーとかうーとか、しどろもどろになり、視線が宙を舞う。
こうなった三橋を見ると、やっちまったと思いはするが、苛立ちの方が募る。
「おい、阿部。」
睨むなって、花井が言う。
宥めるような表情の花井の顔をちらりと見て、それから三橋の顔を見る。
…今にも泣き出しそうな三橋にやっぱりイライラする俺はおかしいのか?!
「あのさ…多分なんだけど…」
声を出したのは栄口。
「花井と阿部がさ、上手く俺達を引っ張ってくれてるってことじゃないかな?」
「は?」
「つまり…二人が仲が良いと、俺達は頑張れる。」
…何だよ、それ、と言い掛けたら、
「あ〜何か分かるな、それ。」
水谷だった。
「やっぱ意味分かんねぇって。」
憮然と答えると水谷も上手く言えないようで、だから…なぁ?と他のメンバーに目を移す。
「うん、俺も何か分かる。」
「何だよ、巣山まで。」
巣山はチラッと花井を見てから、少し言いにくそうに答えた。
「俺から見てさ、花井の第一印象ってかなり俺様だったんだよね。」
一瞬沈黙して、ちげぇねぇ〜!と皆がドッと笑った。
花井は、んな昔のこと!と真っ赤になっていた。
「実際はそんなことなかったんだけど、あん時の花井と阿部って、この先大丈夫かよ?ってくらい険悪だったからさ。」
あれは…
三橋の凄さを皆に分かってもらうためにわざとやったことだからな。
確かに笑っちまうくらい花井は食い付いて来たから
(思えばホントに分かりやすいよな)
そう思われるのも仕方ないけど。
「確かにそんな感じだったよね。」
黙っていた沖が巣山に同意する。
皆が同様に頷いていた。
「なのに花井は副キャプ真っ先に阿部を指名したりさ。」
「そうそう!ベンチでも割りと阿部の言うことすぐに理解したり!」
「あの阿部を宥めることが出来んのは花井だけだし。」
「それは確かに言えるよな。」
何でこんな会話になるんだ。
それが何で皆が上手くやってけるってことになるんだ?!
ああ、花井、顔が真っ赤だぞ。
大概分かりやす過ぎだからちょっと抑えとけよ(溜め息)
「もちろん栄口もそうだけど、栄口は誰とだって上手くやるじゃん。うちは花井と阿部が上手くやってなかったら回らないと思うよ?」
「他のキャプテン、副キャプテンって想像出来ねぇしな。」
「何だかんだ言って、いいコンビなんだよな。」
「なんつうか…なんだろ、ええっと…」
「おとんとおかん!!」
「そう!それそれ〜!!」
訳分かんねぇ…こいつら何考えてんだか…。
大体三橋が変なこと言い出すから…
ふと三橋に目をやると、嬉しそうに笑っていた。
俺と目が合うと、またきょどり出したけど、
「…言いたかったのは、そういうことなのか?」
と聞くと、パアッと笑顔になって、
ウンウンと何度も頷いた。
そんな風に思われてたなんて知らなかった。
しかもみんなに。
おとんとおかんはかなり心外だが、少なくともみんなの信頼を受けていると言うことはよく分かった。
隣の花井を見る。
少し神妙な顔付きに変わってるから、花井なりに何かを感じたんだろう。
なあ、花井。
すげぇ嬉しいよな。
がむしゃらにやってきたけど、間違いじゃなかったんだと実感出来る。
皆の笑顔がまた嬉しい。
三橋、これはお前が繋いでくれた絆だ。
お前がいなかったら俺達は繋がっていなかったんだ。
でもさ、
俺と花井が付き合ってるって知ったら、こいつらどうすんだろうな。
「おかんは絶対阿部だよな!」
「田島っ!そんなはっきりと言ったら駄目だろっ!」
「おーまーえーらー!!(怒)」
三橋の部屋に響く笑い声。
みんなの笑顔。
花井、お前の幸せそうな顔。
俺もなんかすげぇ幸せだ。
◇2010三橋誕SSです。
それっぽくなくてもそうだと言い張る。
それでもってやっぱりハナベからは離れられません(笑)
ちょっと早いけど、三橋誕生日おめでとう!
2010.05.15
振り小説TOPへ