「 キラキラ 」
三橋の誕生日は、何となくみんなで集まってお祝いをした。
何でって、
試験休みだしな。
去年からの流れ?みたいな(笑)
また巣山と俺のもってみんなが騒いだが、慎んで辞退した。
誕生日を祝うなんて、照れ臭くて出来ねぇっての!
みんな普段は野球ばっかりで、もちろんそれは望むところなんだけど、
たまにはこんな風に話したりするのっていいなって思った。
ああ、きっちり勉強はさせてもらったけど。
田島に三橋…頭痛て〜(苦笑)
そんなことを思いながらの、三橋んちからの帰り道。
不意に鳴りだす携帯。
メール着信。
「…三橋?」
『花井くん。忘れ物あるよ。まだ近くにいる?』
え。
俺何か忘れたか?
明日でいいよって返信しかけて、まあいいか取りに戻ろうと思った。
そんなに時間遅くねぇし、西広と喋ってたからまだ三橋んちの傍にいるし。
『分かった。引き返すから待っててくれ。』
自転車の向きを変え、三橋の家に向かった。
「花井、くん。速、かったね。」
ふひって嬉しそうに笑う三橋。
つられて笑ったけど、引きつってなかったか、俺。
なんか赤くなってたかもしれないけど知らん顔して忘れ物のことを尋ねた。
「あ、ごめん、なさい。ノート、だけど、まだ部屋に…」
ノートか。
そりゃないと困るな。
「すまなかったな。ええっと、上がっていいか?俺自分で取りに行くから。」
三橋の勉強時間を割くのは避けたい。
部屋まで取りに行って、三橋にはそのまま勉強してもらおう。
「うん、どう、ぞ。」
やっぱりふひっと笑う三橋。
そう言えば、三橋の笑顔を普通に見かけるようになったよなぁ。
部屋に入ると、机の上にあるノートを三橋がバタバタと持ってきてくれた。
「はい、花井、くん。」
「サンキュー。」
受け取って、三橋の顔を見て。
真っ直ぐ俺を見つめる瞳に、俺の気持ちは騒めく。
あれ、俺ドキドキしてる?
何でこんなに恥ずかしいような気分なんだ?
何だか沈黙してしまって気恥ずかしさMAXだ。
そう言えば、あんまり三橋と二人っきりって、ない、かも。
「…あ、えっと…じゃあ、帰るな。」
そう言って部屋を出ようとした時、三橋が俺の服の袖を掴んだ。
驚いて振り返ると、あり得ないくらい真っ赤な顔の三橋。
「あっあのっ…ごめんなさい!!」
「…は?何謝るんだよ。」
突然の謝罪に困惑する。
言いにくそうに俯く三橋に、若干イライラとした。
「…あの…ノー、ト…」
「ノート?ノートは俺が忘れたんじゃねぇか。」
だからメールくれたんだろ?
だけど三橋は首をぶんぶんと振って、違うっ!と言った。
「ノート、は…隠した、んだ。」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
え?何??
か、隠した?!
「な、な??」
次の言葉が出て来ない。
なんか俺、三橋にしたか?!
んなことされるようなことしたか?!
ショックだ。
ショック過ぎて耳鳴りまでしてくる。
俺…
何でだろ、三橋には好かれてるような気がしてたのに…
「花井、くんと…二人で、話したかった、んだ。」
「………へ?俺と??」
ウンウンと頷く三橋はなんか小動物的で。
17歳の高校球児捕まえて言うことじゃないけどさ。
「二人で?」
ウンウン。
「みんなとじゃなくて、俺と?」
ウンウン。
「俺と…何話すんだ?」
「…へ?!」
明らかに、何も考えてなかったような…そんなキョドり方すんなよ(笑)
「ああ、別に嫌だって訳じゃないから、安心しろって。
だけどノート隠すのは無しな。普通に誘ってくれよ。用がなきゃ断ったりしねぇし。」
ホントに?!と満面の笑みを返してくれた。
素直な反応にこちらも嬉しくなる。
普通に誘えなかった理由はよく分かんねぇけど、俺を必要としてくれてんのは間違いなさそうだし。
「じゃあ…どっか一緒に出掛けっか?テスト済んだら。」
「う、うん!」
キラキラした顔で俺を見上げるから、なんだかいい事をしたような気分になる。
どこに行こう。
なんかワクワクしてきた。
でもその前に…
「と言う事は、とりあえず…」
「?」
「赤点回避。」
「!!」
キラキラしていた顔が、一気に曇天になる。
「せっかくだから、もうちょっと一緒に勉強すっか。」
で、またキラキラだ(笑)
三橋って、こんな面白いやつだったか。
そんで、
可愛いやつだったか。
頭の片隅に、テスト明けのワクワクは置いといて、俺はリーダーの教科書を開いた。
◇ 2011三橋誕SSで間違いないです、ええ間違いありません。
そこんとこ突っ込まなくて大丈夫です、散々自分で突っ込みましたのでww
話しかけたくてしょうがないけど、断られちゃうよね?みたいな恐怖って誰でもあるよね。
三橋はきっと、それが極端。
2011.06.07
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